応援団 1



「あれ平助、おはよ」
総司がパソコンから目をあげて不思議そうな顔をした。
「おう、めずらしいな朝から。どうした?」
左之もくるりと椅子を回して振り向く。平助は尻ポケットから財布を出しながら言った。
「金返しに来たんだよ。前飲んだとき左之さんに借りたじゃん」
いつでもいいって言ったろー?という左之の声を聞きながら、総司は仕事に戻った。後ろでは左之と平助がごちゃごちゃしゃべっているが、月曜日の今日は急ぎの仕事がある。

「左ー之さん!」
千が左之に声をかけると平助も振り向いた。
「あれ〜?千じゃん。お前左之さんと同じ担当だっけ?」
平助が聞く。
「ううん。第二担当なんだけどちょっと忘年会の係りの件で左之さんに用事があって」
「なんだよ?おまえら知り合い?そう言えば平助は第二営業担当のサービス部だっけか」
左之の言葉に平助はうなずいた。
「結構何回かみんなで飲み行ってるよな。何?営業部の忘年会係りなの?二人とも」
「そうなのよ〜!ったく忙しいのに部長が好きなのよねぇ、そういうの。私が第二営業の係りで、第一営業の忘年会係りが……」
左之が自分を指差す。
「オレ」
平助がうらやましそうに言った。
「へぇ、いいなぁ。営業部の忘年会って羽振り良さそ〜。係りって何すんの?」
「それを話に来たのよ。どうします?左之さん。今年もビンゴ?」
「毎年同じだけど、まぁいいんじゃねぇか?部長もビンゴお気に入りだしよ」
左之がそう言うと、千は鼻に皺をよせた。
「さすがにこう毎年だと飽きてくるけどねぇ。ね?千鶴」
千はちょうど通路を通りかかった千鶴に声をかけた。突然声をかけられたた千鶴は驚いて立ち止まる。
「え?う、うん……あ……」
千鶴は、千に頷き返したものの、後半の言葉は皆と一緒に自分を見上げた総司と目があい、口ごもった。
「……おはよう」
総司が言うと、千鶴は慌てたように挨拶を返す。
「お、おはようございます」
頭を下げて丁寧なあいさつをして。再び上げた千鶴の顔はこれ以上赤くなりようがないほど赤くなっていた。視線も合わせられないようで、斜め下を見て、あの、その……ともごもごとつぶやく。
「あ、え……あの……じゃあ……」
真っ赤になったままどこに会釈をしているのかあいまいな方向に頭を下げて、千鶴は足早に去って行った。

不自然な千鶴の背中を、平助と千と左之はキョトンとした顔で見送り、お互いに顔を見合わせ、次に総司の顔を覗き込む。
「………」
相変わらずパソコンの画面を見ているものの、総司の目じりはうっすら赤くなっていた。からかわれる予感をひしひしと感じているのか、かなり不機嫌な表情だ。

「なんだなんだ〜?金曜日慌てて帰った後思い出すだけで赤くなるような……」
「左之さんうるさい」
凍えるような声で総司は左之の言葉をさえぎった。その総司の雰囲気に、平助も何かピンときたようで聞く。
「ええ?なんだよ総司。お前もしかして……」
「平助死ね」
振り向きもせず総司はまたもや平助の言葉をさえぎった。平助は面白いものを発見した仔犬のように目を輝かせる。
「え?マジで?千鶴と?総司があっちっち……」
「平助。マジ殺すよ」
ピシっと空気が張りつめる音がして、さすがの平助も黙り込んだ。

「おい」
左之が席から腰を浮かせて千と平助を促す。
「喫茶室いこーぜ」









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