沖田総司






席に戻った総司は、にやにやしながらこちらを見ている原田にムスッとして言った。
「よく考えたら、左之さんになんかノせられましたよね」
「何がだ?」
「だってそもそもあの子が通路を通るから僕が仕事に集中できないって話だったのに、なんでだか一か月かけて誰がおとすか、みたいな話になってるじゃないですか?」
メールをチェックしながら言う総司に、原田は伸びをしながら言う。
「そうでもしなきゃ誘わねーだろ。……誘って来たんだろ?」
原田の言葉に総司は黙り込んだ。しばらくしてから不機嫌そうに言う。
「……誘いましたよ」
「よかったじゃねーか。お前、前に『可愛い子だよね』って言ってたろ?」
「言いましたけど、なんで夕飯二人で食べに行くことになってるのかよくわからない」
原田は総司の背中を勢い良く叩いた。
「細かいことは気にすんなって!かわいい女の子と!うまい夕飯を食べに行く!いい〜じゃねぇか。楽しんで来ればいいんだよ。そんで一か月後にはお持ち帰りってことで」
意味ありげな顔で総司を見てくる原田に、総司は軽蔑したような視線を投げた。
「もう誘わないですよ。だって理由もないし」
「仕事に集中したいんだろ?」
「そんな頻繁に誘ってたら、逆に仕事に集中できないですよ。今は近藤さんのために仕事を頑張りたいんです。」
そう言ってパソコンを覗き込む総司に、原田は溜息をついた。

「お前……仕事も大事だけどよ、あれじゃねぇか。てきれーき。結婚はどーすんだよ。近藤さんも心配してたろ?ちゃんといろんな女性ともつきあってだな〜…」
「もうちょっと一人前になったらそういうことを考えます。っていうかそのくらいの歳になったらお見合いでもして適当な子とちゃんと結婚するから大丈夫です」

「それで家庭も顧みず、仕事仕事のジャパニーズビジネスマンのできあがりってわけかよ……お前はぱかだなぁ」
呆れたようにそういって、原田は総司の肩に腕を回した。
「いいか?世の中には仕事以外にも楽しいことがたっっっっっんまりとあんだよ。その中でも断トツが『オンナ』。アムールだよアムール!愛と仕事があって初めて人間は一人前になんだよ。修行だと思ってちゃんとやれ」
総司は嫌そうに原田の腕を肩から払いのけて言った。
「ラテンの国の人と一緒にしないでくれますか?僕はこれで十分幸せなんです」
頑なな総司に、原田は唸る。
「わかった、言い方を変えよう。お前は人間だろ?」
「……そうですけど?」
「人間のオスだ。なんのために生きてると思う?」
「……」
「生殖だよ。すべからくすべての生あるものは、次世代に自分の遺伝子を少しでも有利に残すために存在してんだよ。その最大最高の基本原則を忘れて、遺伝子じゃなくて脳ミソで行動しようとしてたらなぁ、いつか破綻がくるんだぜ」
「……で、何が言いたいんですか」
もう早く全部言わせてすっきりさせてから仕事に戻ろう、と総司諦めて椅子を回転させて原田に向き合った。
「だから千鶴ちゃんをこれからも誘ってお持ち帰りしろって」
「……なんでそんなに人の生殖活動に興味があるんですか?」
総司が腕を組んで原田に聞く。
原田も腕を組み、うーんと考え込んで……
「面白いから」

その返事に、総司は冷たい視線で応えてくるりと椅子をまわし仕事に戻ったのだった。






BACK  NEXT


戻る