反省会



雪村千鶴

「……で?」
千の言葉に、千鶴はしょんぼりと答えた。
「……で、終わり」
他の女子同僚が聞く。
「終り?無事に家に帰ったかのメールも電話もなし?次の約束も?」
「……電話番号、聞けなかったし、メールアドレスも……」
千鶴を囲んだ四人の女子社員達は溜息をついた。
「せっかくみんなにいろいろやってもらったのに……ごめんね。これ、借りてた靴」
紙袋に入ったあの時のパンプスを、千鶴は貸してくれた友達に渡した。
「……ううん、こっちこそ。なんかこれのせいで雰囲気悪くなっちゃったんだね……ごめんね」
しんみりした雰囲気を打ち消すように、千が力強く言った。
「次、行くわよ!」
「え?」
キョトンとした千鶴の両肩を、千はがしっと掴んで言った。
「ことはもう千鶴だけの問題じゃないのよ!」
どういうこと?と他の女子社員が聞くと、千はうなずいて答えた。
「今朝からずっと秘書課と受付グループが動き出してるのよ。沖田さんを食事とかコンパに誘ってるみたい。今の所成功してないみたいだけど、ここで私たち営業担当がひきさがってごらんなさい!」
そう言って、じろり、とみんなを見渡した。皆は神妙な顔でスピーチを聞いている。
「……やっぱり営業はだめだ、女の子は秘書課か受付グループでなきゃ、っていう評価が固定化しちゃうのよ。これは営業部女子の今後のコンパのお誘いにもかかわってくる重大事件よ。千鶴にはなんとかがんばってもらわないと!!」
「でも……頑張るって言っても、昨日も沖田さん全然……そんな感じじゃなかったし……」
千鶴は昨日の様子を思い出してみる。
楽しくは……お話した。食事も雰囲気も良くて、とても素敵な夜だった。
でも総司からは、千鶴の個人的なことに興味を持っているような素振りはまったくなかった。千鶴の方もどうやって話をそっちに持って行けばいいのかわからなくて、ふつーの同僚同士の話に終始したのだ。
「そんなことはどーでもいいのよ!」
千がドスの効いた声で言う。
「千鶴ちゃん、改めて二人であってみてどうだったの?憧れてたって言ってたけど、それだけ?」
千鶴は赤くなった。
「……話してみて……、やっぱりすごく素敵な…人だったよ。かっこいいのはもちろんだけど……」
説明しようとして千鶴は言葉を切った。なんと言えばいいのかわからないが、総司の考え方や生き方がシンプルで潔くて、素敵だと改めて思った。普通の人ならたとえ信念があっても、日々の忙しさや自分の体力、能力から楽な方へ流れる場合が多いと思うのだが、総司は強い意志と行動で実行に移している。
「……うまく言葉で説明できないけど……」
千鶴が口ごもると、千は大きくうなずいた。
「その言葉で十分よ!とにかく私たちは千鶴ちゃんを応援するから!」
「……でも、もう……何をしたらいいのか……」
戸惑う千鶴に、千はにっこり笑った。
「そんなの簡単よ。千鶴ちゃんがしたいことをすればいいのよ」
「したいこと?」
「そう。何がしたいの?」
何が……?
「……もっと……沖田さんと話したい。いろいろ沖田さんのことを知りたい……」
千鶴がつぶやくように言うと、千を含め女子社員達はにっこり笑って頷いた。








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