【薄桜学園スポーツデイ! 3】 
総司高校三年生、千鶴高校二年生の五月です。二人はつきあっています。アホアホ話です。「青は藍より……」の延長線上のいつかの設定です。
作者は各種スポーツについてほぼ未経験者です。あまり深くこだわらずフィクションとしてお楽しみください。

!!!ATTENTION!!! 沖田さんのキャラが崩壊気味です。なんでもこい!の方のみお読みください。














   「沖田!どうしたんだよ!」
チームメイトたちが総司をゆするが、総司はぼーっとしたままだ。
「もうやる気なくなっちゃったよ。次の試合、どうせ千鶴ちゃんのところとかちあっちゃってるから応援に来てくれないし、それよりも今は千鶴ちゃんのせいで脳みそがとろとろに溶けちゃって……」
まったくやる気をなくしている総司を前にして、チームメイトたちは茫然とした。もうすぐ次の試合だ。ベスト8に残っている総司達の次の試合は、バレーボール部が三人もいる優勝候補だ。平助も自分のバスケチームの試合に行ってしまい補充はバレー未経験者だし、総司にやる気をだしてもらわなくては困る。チームメイトたちはぼけっとしている総司を置いて、一をひっぱって千鶴のところまでやってきた。

「頼む!君んとこの試合が始まるぎりぎりまで、うちのチームの応援をしてくれ!」
突然知らない人たちから頼み込まれて、千鶴は驚いた。端の方で呆れた顔をしている一を見る。
「あ、あの……?」
とまどっている千鶴を見かねて一が溜息をつきながらいった。
「……千鶴の正しい使い方はそうではない」
「は?」
クエスチョンマークをはりつけているチームメイトの一人に、総司を呼んで来い、と一は言い千鶴に向き直る。

 「……千鶴」
「はい?」
「先ほど俺たちの試合を見ただろう?」
「……はい」
「いつも道着を着て剣道をしている総司しか知らないと思うが、バレーをしているあいつはどうだった?」
一の質問に千鶴は赤くなった。
その時チームメイトに連れられた総司が千鶴の後ろから歩いて来る。
「……すごく……かっこよかったです……。スパイクとかほんとに……迫力があって……」
千鶴の声に総司は足を止めた。
「……いつもと違ってすごく……真剣で。なんだがドキドキしました。剣道をしてる沖田先輩も好きなんですけど、バレーをしてる先輩も楽しそうで……すごく好きです」
「そうか。わかった。千鶴も次は試合だろう?がんばれ」
突然の一の質問に、千鶴は???と思ったが、はい!、と答えて自分たちのチームへと走って行った。一はそんな千鶴の背中をしばらく見つめた後、踵を返しチームメイトたちの方へと歩いていく。

「……聞いたか?」
総司の方を顎でしゃくって、一はチームメイトに聞いた。
「ばっちり!」
「斎藤君、グッジョブ!」

総司はピンクのハチマキを結びなおしていた。

 

 結局総司達チームは、優勝候補チームに善戦したものの負けてしまった。千鶴達もバレーボール部員の彼が廃人になってしまっていたせいで負けてしまった。
暇になった総司と一は体育館でやっている平助たちバスケチームの応援に向かう。優勝候補の平助のチームは次が優勝決定戦だった。
「ああーっ総司!一君!いいところにぃ!!」
試合前の平助が大喜びで飛びついてきた。
「バスケ部の奴らが一人は腹痛、一人は突き指ででれなくなっちまったんだよ!総司と一君でてくんねぇ!?」
平助の言葉に、総司と一は顔を見合わせた。
「……別にかまわないが……」
「もう疲れたからイヤ」
二人は同時に答える。
総司の言葉に平助が叫ぶ。
「えぇ〜!頼むよ総司!さっきおまえんとこのバレーにでてやったじゃん!」
平助はすがるように一を見た。一は考え込む様に体育館の入口を見る。そこにはクラスメイトの女友達と体育館に入ってくる千鶴の姿があった。一は平助に言う。
「助けてもらった恩は返す。待っていろ」

 

 一がどこかにいなくなり、相変わらず平助が総司に試合に出るよう頼み込み総司がそっけなく断っていると、千鶴がかけよってきた。
「千鶴ちゃん♪」
総司が喜んで尻尾をふると、千鶴がキラキラした目で嬉しそうに弾んだ声で言った。
「沖田先輩、斎藤先輩に聞きました!バスケにもでるって本当ですか?」
「え?いや……」
「すごいです!嬉しいです!!先輩のバスケきっとすごくかっこいいですよね!バレーも素敵でしたけどバスケはまた格闘技って感じで……」
夢中で話していた千鶴は、まじまじと自分を見ている総司と平助に気が付いて、自分が今とんでもなく恥ずかしいことを言っていたことに気づき、真っ赤になった。
「あ……!あの……、今のは……。今のは……」
忘れてくださいっ!と叫んで走り去っていく千鶴を見ながら、総司は平助に聞いた。

「バッシュー、貸してくれる?」


 総司が今朝、バスケがよかった、と自分で言っていたのは本当だった。平助と一、総司の三人のチームワークは本当にうまかった。一が指示をだし、平助が切り込み、総司がシュートを打つ。セットプレーも複雑なフォーメーションもまるで毎日やっているかのように自然に繰り出されている。暇があれば一の家に入りびたっている二人だから、きっとゲームをしているだけでなく外でもバスケをしていたのだろう。
体育館は優勝戦であることと、薄桜学園の有名人剣道部の三人組がでていることとで超満員だった。すごい熱気が体育館を包む。

 千鶴は総司達三人のプレイに心を奪われたまま、手をぎゅっと握りしめて目を見開いて試合を見つめていた。
一が投げたロングパスを、平助が空中で受け取る。それを横から走ってきた総司が目もあわさないまま受け取ってドリブルで相手ゾーンに切り込む。ディフェンスにはばまれるとすでにその後ろに平助が回り込んでいて、総司はガードの股の間からバウンドバスをした。受け取った平助はすぐシュートをするようなフェイントを一度入れるとガードの横を振り切りドリブルでゴール下まで行ったかと思うとレイアップでシュートをきめた。

 わぁっと歓声が体育館を包む。千鶴も思わず大きな声をあげてしまった。かっこいい〜!という声があちこちからあがる。
本当に恰好良かった。まるで空中戦のようにみんな早くて軽い。他の人と時間の進み方が違うのではないかと思うくらい三人とも余裕で相手をかわして行く。かわせなくなるとまるで予想していたかのように誰かがちょうどいい場所に現れて、ボールのスピードは落ちないまま相手ゴールまで運ばれていく。三人の動きに、バスケ部が二人いる相手チームは翻弄されて本来の動きが全くできていなかった。

しかし相手は現役バスケットボール部員、シュート感覚は毎日練習しているだけあって抜群だった。3ポイントシュートを何度も決められて、点差は一点から二点を争う接戦になる。
また3ポイントシュートを入れられて、点差が3点差にひらいた時、ゆっくりとドリブルをしながら一が平助に言った。
「次から攻めるときお前は何もしなくてもいい。あのシューターにつけ。絶対に打たすな」
一の後ろからあがってきた総司が聞く。
「どうやって攻める?」
「平助からの攻撃はもう警戒されてる。行くぞ。総司」
一はそう言うと、勢いをつけて敵コートへと進んだ。
平助が、まるでパスをもらうかのように一の前の横切る。警戒していた敵のチーム2人があわてて平助について逆サイドまで走っていくのを横目で見ながら、総司は一を後ろから抜きながらボールを受け取り、そのままゴールへと向かい油断していた敵を一人抜いてゴールをしようとする。それを読んでいたかのように大柄な敵バスケ部員が、ゴール前で両手をあげて総司にのしかかってきた。総司は振りかぶっていたボールをそのバスケ部員の後ろにすでに来ていた一に下からバスをする。飛び上がっていたバスケ部員が対応するより早く、一のシュートが滑らかに決まった。

わあぁぁぁっ!!

地鳴りのような歓声など聞こえていないかのように、総司達は次の攻撃に備えて、すぐに自分たちのコートに戻った。平助だけが例のシューターをぴったりとマークしている。そのせいで敵チームはシューターにボールを回せず、かといって総司達のガードがきつくて中には入れない。しょうがなくシューターではないもう一人のバスケ部員が3ポイントを打った。
それを見た途端、総司は叫んだ。
「平助!!」
「おっけー!」
総司はゴール下にダッシュをして、大柄の敵バスケ部員のジャンプよりも高く飛びリバウンドを取る。そしてそのままふりむくと、既に敵コートに一人で走っていた平助にロングパスを思いっきり投げた。
「速攻だ!!」
敵チームが叫んだ時はすでに遅く、平助はノーマークでシュートを決めていた。

「一点リードか……」
一はちらりと時計を見る。あと5分。
「あと2ゴールは欲しいな」
敵チームは逆転された点差に必死だった。敵のポイントガードが指示を出す前に自ら切り込んでくる。一は冷静に彼の動きを見てすれ違いざまにボールをカットした。

わぁぁ!

歓声があがる。ノーマークの一を敵チームの全員が追いかけた。総司と平助がそれぞれ別サイドからあがる。一を追いかけ抜かした平助が叫ぶ。
「一君!」
一は目線でうなずくと平助へとパスをだした。敵チームバスケ部員三人が全員平助にあつまり反則覚悟でプレッシャーをかけてきた。平助はそれを無理やり押しのけてシュートを打つ。
「無理だ!はいらない!」
敵のバスケ部員が叫ぶ。
ボールはゴールのリングにあたって跳ね返る。それを後ろから追いついた総司が、そのまま空中でシュートをした。

「おお〜!総司!アリウープすっげ!」
平助が腕で汗をぬぐいながら笑う。
「僕が来るのわかってシュート打っただろ。憎いね」
さすがに息をきらしながら、総司がニヤッと笑う。
「後2分だ。ダメ押し1ゴールとるぞ」
一緒にあがってきた一が言う。
「「りょーかい!」」

最後の頼みの綱、敵チームの3ポイントシューターに投げられたパスを、平助がカットした。敵チームは一斉に戻る。一にボールを渡した平助が聞いた。
「どうする?3点リードだけど、このまま時間つぶしとく?」
「ねぇ」
総司が悪戯っぽく瞳をきらめかせて二人を見た。
「久々にアレ、やってみようよ。ギャラリーに受けると思うよ」
「あれって……アレ!?えー!?俺覚えてっかなぁ!」
「大丈夫だって。散々一君ちの駐車場でやったし。体が覚えてるよ」
総司の言葉に一もうなずいた。
「よし、それで行こう」
「待って待って、一君で、総司で、ほんで逆サイドに入って……」
「平助と一君が入れ変わって……」
「大丈夫そうだな。行くぞ!」

一応バスケは5人でやるスポーツなのだが、すっかり忘れ去られている総司達チームのクラスメイト二人だった……。

 千鶴が息をつめて、最前列でしゃがんで手を握り合わせて総司達を見つめていると隣の知らない女子から、ねぇねぇ、と声をかけられた。
「これ……まわってきたの。一つとって隣にまわして」
「え?……これって……いいの?」
「うん、3−Eの人たちがまわしてきた。後ろの人にも渡して」
千鶴は自分の後ろで立っている人たちにも袋を渡して、自分も一つとり、隣へ回した。


 一が持っていたボールを斜め前の総司にパスする。総司はそれを持って逆サイドに入ってきた平助にパスをする。そこから前に進んだ一に平助がパスをして……。複雑に動きながらも全然そんなことを感じさせずに総司達三人は軽やかにパスを交わしながら敵コートへ攻めていく。敵はカットしようにもガードしようにも細かくパスされるボールを追うことすらできずあっという間に抜かれて行ってしまった。最後の砦、ゴール下を守っていた二人のバスケ部員たちも華麗なパスワークであっという間に抜き去り、最後は平助がシュートをすると見せかけて一がシュートをする。
結局ボールは一度も地面につくことなくパスをつないだだけで、パサッと静かな音を立ててゴールに吸い込まれていった。

きゃあああああああ!

悲鳴のような大歓声と同時に、試合の終了をつげる笛が体育館に響き渡った。

パン。パァン!パン!パパパンッ!

それと同時に、いくつものクラッカーが鳴り響いた。千鶴は思わず体育館の天井を見上げる。幾重にも囲んだ観客たちが興奮したように笑いながら空にむかってクラッカーをうっている。
色とりどりの紙テープにキラキラした雪のような紙片がひらひらと舞い、総司達選手の上からふりそそぐ。総司もびっくりしたように上を見上げていた。

土方が、てめーらで掃除しろよ!とどなっっている。
観客の生徒たちみんな、自分のクラスではなくても心が高鳴る試合に興奮して笑いあっている。

スローモーションのようにきれいな景色で、時が止まってしまったようだった。

コートの真ん中でクラスメイト達にもみくちゃにされている総司達を見ながら、千鶴も、本当に素敵だった三人のためにクラッカーの紐をおもいっきりひいたのだった。

 


 







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