【薄桜学園スポーツデイ! 2】 
総司高校三年生、千鶴高校二年生の五月です。二人はつきあっています。アホアホ話です。「青は藍より……」の延長線上のいつかの設定です。
作者は各種スポーツについてほぼ未経験者です。あまり深くこだわらずフィクションとしてお楽しみください。

!!!ATTENTION!!! 沖田さんのキャラが崩壊気味です。なんでもこい!の方のみお読みください。














  五月の青空の下、各チームが熱戦を繰り広げている。応援する生徒たちも息の合った応援ソングを歌い薄桜鬼学園のスポーツデイは盛り上がりを見せていた。
そんな中、とうとう総司達3−Eバレーボール1グループと千鶴のクラスの2−Aバレーボール2グループとの試合が始まった(千鶴は2−Aバレーボール1グループで今は自分のクラスの応援である。)

 千鶴は困っていた。今目の前で行われている試合は自分のクラスメイト達の試合で。まわりの友達もみんな一生懸命応援してる。対する相手チームには……総司。お世話になっている一もいる。

ここで自分のクラスの応援をするのは当然なんだけど、沖田先輩にはたぶん『当然』は通用しない気がする。でも……。

沖田先輩にはちゃんと先輩のクラスの応援があって、それとは別に先輩の個人的なファンの人たちも応援してる。うちのチームはクラスの応援しかないんだから、やっぱり私は自分のクラスの応援をするのが筋だよね!

総司のことが大好きでも、決してデレることのない女、雪村千鶴であった。

 

 クラスメイトと声を合わせて応援している千鶴を、総司はピンクのハチマキを額に結びなおしながら、ちらりと見た。

ふーん……そういうつもりなんだ。まぁいいけどね。
千鶴ちゃん、可哀そうだけど勝つのは僕だから。

黒い笑みを浮かべながら、総司は後衛が受けたボールを一がトスするのを見る。

 よし!タイミングばっちり!

総司は思いっきりジャンプして、高い打点から渾身のサーブを叩き込んだ。

「「あぁ〜!!」」
「「きゃぁああああ!」」

千鶴のクラスからは残念そうなどよめきが、総司側のコートからは大歓声が響き渡った。降り立った総司は、チームメイトとハイタッチをする。
総司が反対側のコート脇を見ると、残念そうな顔の千鶴と目があった。総司は、ニヤッと笑って親指をたたてる。千鶴はむっと頬をふくらませて、舌を出してあっかんべーをした。その顔が可愛くて、総司は思わず笑ってしまった。

だめだだめだ。ここで毒気を抜かれちゃ計画が台無しになっちゃう。
どんどんいくからね。

最初はほぼ同じくらいだった点差が、時間がたつにつれどんどん開きだした。千鶴達クラスのチームには、中学の時のバレーボール経験者が二人いたため、総司達といい勝負ではあった。しかしやはり並の運動神経ではない総司と一の連携プレーに押され気味だ。
その時、レシーブミスしたボールを追って行った総司のチームメイトが観客たちにつっこんで転んでしまった。わぁっ、というどよめきがあがる。審判がタイムをとったため総司達が転んだ選手の具合を見に行くと、足をひねってしまったようで動けなくなってしまっていた。
「大丈夫かよ。ほら、保健室連れてってやるよ」
自分の試合を終えて総司達を見に来ていた平助が、怪我をしたクラスメイトに手を差し出す。
「待て。平助、お前こいつの代わりにバレーに今から入れ」
怪我人の治療は、平助の隣のクラスメイトに頼んで一は平助にバレーのチームの助っ人に入るように言った。
「え?俺?別に…いいけど……」

 平助、一、総司の剣道部員オールスターの勢揃いに、観客の女子生徒たちは色めきたった。すごい歓声があたりを包む。総司達チームの応援に圧倒されて千鶴達のチームは劣勢だ。千鶴は声も枯れるほど声援を送っていたが、実力も人気も総司達にはかなわない。千鶴のクラスのチームは、タイムの間に集まって相談をし、千鶴のバレーボールチームにいるバレーボール部員の男子生徒(先ほど千鶴を助けた彼ですよ!)をメンバーチェンジして入れることにした。

「がんばって!」
千鶴達の声援をうけて、バレーボール部員の彼がコートに入ると、総司の目がキラリと光った。
「おら、総司。次お前のサーブからだぞ」
平助が投げてよこしたボールを、総司は感触を確かめるように何回かバウンドさせた。
そして、真剣な目をして構える。
高く、高く、トスをあげて、総司は助走をつけて飛び上がった。

「って、えぇっ!ジャンプサーブ!?」
平助が驚いて叫ぶ。
総司は空中高くに飛び上がる。ピンクのハチマキと茶色の髪が空に舞う。そのまま体をそらせたきれいなフォームでボールを正面からとらえると、勢いをつけてスパイクサーブを打ち込んだ。

バシィィィ!

すごい音がして、相手コートに総司のサーブが入った。素人がとれる速さではなく、誰も取ろうとすらしていない。
「総司ジャンプサーブ打てんの!?」
平助の言葉に、一が答える。
「体育で何故かジャンプサーブができるか、という話になり、あいつは授業中毎回ずっと練習していたな、確か……」
また総司にサーブのボールが帰ってくる。

ビシィィィィ!!

またもやジャンプサーブだ。今度は露骨に例のバレーボール部員を狙っていた。しかしさすが現役バレーボール部員。腰を落として威力を殺しながら丁寧に受けて返す。
「ちっ!」
総司は舌打ちをした。帰ってきたボールを総司のチームメイトがレシーブする。前衛と後衛の間くらいに上がったそのボールに向かって、総司はさらに助走をつけて思いっきり後衛からスパイクを打った。
「バッ、バックアタック!?」
平助がまた叫んだ。隣で一が呆れたようにつぶやく。
「総司、空気を読め……」

コートはもはや歓声もなく、水を打ったように静まり返っていた。


 総司が前衛にあがっても、バレーボール部員との勝負(総司の勝手な)は続いていた。総司の打ったスパイクを、バレーボール部員がブロックで止める。ネットにかかったそれを、一がなんとか拾った。かろうじてあがったトスに、総司は今度はフェイントをいれて全力でスパイクを打つ。

ドゴォッ

もはやバレーボールとは思えない音をたててボールは相手チームのコートに入った。
シュルシュルシュル……。
土煙をあげながらボールはコートの上で回転している。千鶴のクラスのバレーボールチームは青ざめた顔でそのボールを見ていた。
バレーボール部員の彼が、総司を睨む。そして次に自分にトスが上がった時に、手加減無のスパイクを打ち込んできた。
総司はそれに飛びついて、回転しながらレシーブする。そのボールをトスとしてチームメイトが上げ、さらにすぐに立ち上がった総司がスパイクのために助走をつけて飛び上がった。

「……なぁ、一君。この話ってさ、確か薄桜鬼っていう幕末の……」
「……ああ、そうだが……」
平助の言葉に、一はうなずく。

ボコォッ!

重低音をだしながら総司のスパイクがバレーボール部員にヒットする。今度のスパイクは重すぎて、さすがのバレーボール部員も受けきれず後ろに転びボールは弾かれ観客たちの後ろへと飛んで行ってしまった。

平助がまた呟く。
「……志を持った男たちがさ…」
「まぁ、あまり深く考えない方がいいこともある、ということではないだろうか」
一の返事に、平助もうなずく。
コートではバレーボール部員をとうとう負かした総司が、大歓声の中、天につきささるようなガッツポーズをしていた。


 「平助!」
「わーってるよっ!」
平助は総司の呼び声に答えながらサーブを受ける。
バレーボール経験者二人と現役バレーボール部員の千鶴のクラスのチームと、人並み外れた運動神経を持つ三人がいる総司達チームは一進一退を繰り返していた。しかし圧倒的な歓声と応援を追い風にじりじりと総司達がリードを広げていく。総司は絶好調だった。

千鶴は反対側のコートの総司を見つめる。
敵であるということはわかっているのに、千鶴は総司から目が離せなかった。
まるで空中でとまっているかのような軽い身のこなし。重力なんてないような軽やかなジャンプ。それとは正反対の全身の力を一点に集中させたような迫力あるスパイク。ワンテンポ遅れて総司についていく茶色い髪とピンクのハチマキが青空に映えて、本当にきれいだった。
千鶴が見惚れていると、ちらりとこちらを見た総司とばっちり目が合う。千鶴が見惚れていたのを表情から悟ったのだろう、総司の顔に勝ち誇ったような笑顔が浮かんだ。

うっ……!見られた……!

千鶴はぱっと顔をそむけたけれど、赤くなった顔もたぶん見られてしまった。
後からさんざんからかわれることを予想して、千鶴は恥ずかしくて悔しかった。

一方総司は千鶴の想像どおり、ばっちり自分に見惚れている千鶴を見ていた。浮足立つとはこういうことか、というほど体が軽くなる。なんでもできそうな全能感が総司を満たす。相手チームのサーブは、例のバレーボール部員だった。総司は、来るぞ!とチームメイトに声をかけて、右手を自分の背中にまわす。


 後衛で平助は一をつついた。
「なぁ、一君。総司なんか背中でサインつくってるけど」
平助の声に隣にいたチームメイトもささやく。
「俺らサインなんか決めてないぜ」
一は溜息をついた。
「……要は自分のところにボールをまわせ、ということだろう。俺がトスをあげる。レシーブは頼んだぞ」
一のあげたバックトスにタイミングを完璧に合わせて、総司の高いスパイクがきまった。

 


 そうして総司達は、千鶴のクラスに勝った。
うなだれながらコートを去っていく千鶴達を総司が追いかける。
「千鶴ちゃん!」
先ほど鬼のように自分たちを攻撃してきた総司がやってきたことに、千鶴はぎょっとした。クラスメイト達の視線が痛い。
「おっ沖田先輩、ちょっと今は……!」
「いいからこっち!」
そんなことには全然かまわず、総司は千鶴の腕をひっぱって自分の方に引き寄せる。
千鶴のクラスメイト全員が、総司と千鶴を見つめていた。

「あ、この子、僕の彼女だから」
総司はその視線をものともせず、にっこり爽やかにそう宣言すると、あまりのことに茫然としている千鶴をずるずると引きずって行った。

「鬼みたいだったけど……、かっこいいよね」
「……うん。剣道も強いんでしょ?」
「……運動神経いいんだね……」
女子生徒たちが少し赤くなりながら囁きあう。男子生徒は完全に負けている自分たちに無言であった。


 「〜〜!先輩!もうっ沖田先輩!」
ぐいぐい自分を引っ張っていく総司に、千鶴が怒って声をかける。武道館の裏まで千鶴を連れてきて、ようやく総司は振り向いた。
「何?千鶴ちゃん」
「あれは駄目ですよ!私クラスメイトからどんな風に思われたか……!」
「かっこいい彼氏がいるなぁって思われたんじゃない?」
「……!」
あんぐり。
返す言葉もない千鶴に、総司はひとり言のように続けた。
「とりあえずあのバレーボール部員はつぶしたし、他の奴らも牽制はできたかな」
「?なんの話ですか?」
まったくわかっていないらしい千鶴をちらっと見て、総司は考えた。

鈍いところもかわいいんだけど、自衛のためにもちゃんと現実をわかっていてもらった方がいいかな……。

「千鶴ちゃんが男どもから狙われてるってこと」
総司の言葉に千鶴はキョトンとした。
「……狙われてるって?」
「あのバレーボール部員の奴だって、なんだかんだいいながら千鶴ちゃんに触ってたでしょ。やけに優しかったしさ」
拗ねるようにいう総司に、千鶴はようやくわかって唖然とした。

「沖田先輩……やきもちってことですか?」
あまりの驚き様に、今度は総司が驚く。
「……そうだよ。当然。何。わかってなかったの?」
コクコクコク。千鶴は目を見開いたまま何度もうなずいた。
「僕はやきもちやきなんだよ。相当ね」
「ええっ!沖田先輩がやきもち?いったい誰に……」
千鶴の言葉に、総司はさすがにあきれた。
「……今まで全然気づいて無かったの?一君はもちろん、平助にも、土方さんにも……さっきのバレーボール部員の奴ももちろん」

千鶴は驚いた。総司がやきもちをやくなんて……。
「千鶴ちゃん……。なんでそんなに驚くの。そっちの方がびっくりなんだけど……」
「だって……」
千鶴は驚きながら口ごもった。
「だって、沖田先輩その人たちより全然恰好いいじゃないですか!沖田先輩より恰好いい人にやきもちをやくのならわかるんですけど……。でもそんな人いないですよね。バレーボールだって上手だし剣道だって……。見た目だって沖田先輩の方が断然恰好いいし性格だってちょっと意地悪だけどそこが素敵だし……。笑顔はきれいだし拗ねた顔もかわいいし……」

どんどん出てくる千鶴の言葉に、さすがに総司は赤くなって手で目を押さえた。
「……千鶴ちゃん。ありがとう。嬉しいけど……さすがに照れるからもういいよ」
総司の台詞に千鶴は、はっと我に返った。
「あ…!す、すいませんでした!」
真っ赤になって汗をかいて。くるっと後ろを向いて逃げ出そうとする千鶴を総司が後ろから抱きしめて捕まえる。

 「待って待って。そんな嬉しいこと言って逃げないでよ」
耳元に聞こえる総司の声に、千鶴はさらに赤くなった。自分がさっき思わず言ってしまった本音が恥ずかしくて恥ずかしくて穴を掘ってもぐってしまいたいくらいだった。
固まっている千鶴を、総司も黙ったまま後ろから抱きしめている。

 「……ありがとね。……本当に嬉しい」
そうつぶやくように言う総司に、恥ずかしくてどうしようもなかった千鶴は、少し反省した。

沖田先輩はいつもいつも甘い言葉を言ってくれるけど、私は恥ずかしくてあんまり言ってなかったのかも……。これからはがんばってできるだけ言うようにしよう……。

 総司がそっと千鶴の首筋に顔をうずめる。
千鶴も頭を総司の肩にもたせかけ、自分のお腹のあたりで抱きしめている総司の手をそっと握った。
総司が指をからませてくる。
二人はそのままずっと動かないでお互いの体温を味わっていたのだった。







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