【薄桜学園スポーツデイ! 4】 
総司高校三年生、千鶴高校二年生の五月です。二人はつきあっています。アホアホ話です。「青は藍より……」の延長線上のいつかの設定です。
作者は各種スポーツについてほぼ未経験者です。あまり深くこだわらずフィクションとしてお楽しみください。

!!!ATTENTION!!! 沖田さんのキャラが崩壊気味です。なんでもこい!の方のみお読みください。














   「あ、あんなところにあった」
千鶴はスポーツディ終了後、体育館倉庫の中で転がって行ってしまったバレーボールを跳び箱の裏でようやく見つけた。拾い上げた瞬間、後ろの入口から声が聞こえてくる。
「お、沖田先輩!写真、いっしょにとってもらえませんか!?」

え?
千鶴が思わず跳び箱の後ろにしゃがみこんで入口の方を覗き込むと、総司に二年生女子三人が話しかけている所だった。

また……。
……でもしょうがないか。今日の沖田先輩、ほんとにかっこよかったから……。

千鶴は小さく溜息をついて、そのまま跳び箱の裏でしゃがみこんだ。ここで出て行くよりも、みんながいなくなってから外に出た方が余計な波風がたたないだろう。そう考えてバレーボールを抱きかかえながら座っていると、総司の返事が聞こえてきた。

「ああ〜。ごめんね。僕の彼女、すっごいやきもちやきの甘えんぼの怒りんぼでさ。君たちみたいなかわいい子と写真とったりしたら、僕殺されちゃうんだよね」

総司の言葉に千鶴は目を見開いた。

「え?そうなんですか?2年生のマネージャーの……」
「そう千鶴ちゃん」
「……そんなふうには……」
みえないよねぇ、とつぶやきあう女の子たちに総司は爽やかに言った。
「外面がいいんだよね。まぁそういうわけだから、ごめんね」
総司がそう言うと、女子生徒たちはしょうがない、と名残惜しげに倉庫から出て行った。


 後で一言言っておかないと、と思いながら千鶴は眉間にしわを寄せてしばらくそのままじっとしていた。何の音もしないので、総司も出て行ったのだろうと跳び箱の裏から立ち上がろうとした瞬間…。
「見〜つけた」
総司が悪戯っぽく笑いながら、ひょいっと覗き込んできた。
「おっ沖田先輩!なんで……」
「だって千鶴ちゃんの後追っかけてきたんだから」
にっこりと無邪気に笑う総司に、千鶴は頬をふくらませる。

「……私はやきもちやきの甘えんぼのおこりんぼの外面のいい彼女じゃありません」
「あれ?違うの?」
「違います!どっちかっていうとそれは沖田先輩です!」
顔を赤くしながら千鶴が言うと、総司は笑った。
「そうかもね。ね、それより、どうだった?バスケ見てたんでしょ?優勝したよ」
無邪気な総司の笑顔に、千鶴も思わず笑顔になる。
「おめでとうございます」
にっこり笑う千鶴に、総司はすこし不満そうに言う。
「それだけ?僕はどうだった?」
総司の表情に、千鶴は赤くなった。

「……答え、わかってて聞いてますよね……」
「千鶴ちゃんの口からききたいんだよ。どうだったの?」
「……すごく……かっこよかったです……」
俯いて真っ赤になっている千鶴を、総司が満足気に覗き込む。
「ねぇ、エッチは駄目だけど、勝者にキスくらいは頂戴」
そう言いながら顔を寄せてくる総司の口を、手のひらで押さえながら千鶴は焦って言った。
「ダ、ダメです!」
口を抑えられながら、総司は不満そうに聞く。
「……なんで?」
「だって……だって……。沖田先輩とキスすると……なんか……」
変な気分になっちゃうんです……。
俯いて、真っ赤になって、恥ずかしそうに言う千鶴に、総司は固まった。

 そして溜息をつきながら、ゆっくりと千鶴の手を自分の口から外す。
「……千鶴ちゃん、そんなこと言ったら……」
そう言うと、がばっと千鶴を抱きしめた。
「襲って無理矢理でもキスするにきまってるでしょ!」
そして楽しそうに笑いながら、千鶴の両手首を掴んで顔をよせる。ぎゅっと目をつぶった千鶴を、総司は至近距離から何もしないまま見つめた。

何もしてこない総司に、千鶴はおそるおそる片一方だけ瞼をあげた。総司は濃い緑の瞳に金色の光をきらめかせながら、緩く微笑んでいる。


「……目を開けて、僕を見て。僕が君に触れた時どんな顔になるか見てて」
そう言って、視線をからめたまま触れ合うギリギリまで唇を寄せる。緑色の瞳の上に金色の光が揺れた。
「君の口の中に入ったときに、どんな顔になるか……」
その先は、千鶴の口のなかに溶けて消えた。

総司の言葉と艶めいた表情に、千鶴の胸の奥がズキンと熱くなる。千鶴は催眠術にかかったように目を薄く開いて間近にある総司の長い睫を見つめていた。千鶴の唇に触れると、総司の瞳の焦点があわなくなり、うっとりとしたような潤んだ瞳になった。
きっと自分も今そんな瞳をしているのだろう。そのままお互いの唇を探るように合わせる。
総司の舌がゆっくりと千鶴の唇をなぞり、中に入ってくる。千鶴の舌に触れると、総司はまるで熱いものに触れたように眉根をよせた。頬がうっすらと紅潮している。総司はそっと長い睫を伏せて、顔に角度をつけてキスを深めた。

 千鶴はあまりにも色っぽい総司の表情にもう耐えられなくなり、瞳を閉じた。さぐられるままに口の中を解放し、体中の力が抜けていくのを感じていた。

いつもそうだ。
総司に深いキスをされると、いつもこうなって、もう何もかもどうでもよくなってしまう。
そしてその大きな熱い手で触れて欲しい、何か……よくわからないものを何とかしてほしいと願ってしまうのだ。

千鶴は腕をゆっくりとあげて総司の首にまわす。そのままぎゅっと力を入れて自分から体をぴったりと寄せた。

もっと触れて。
もっと近くに……。

千鶴の仕草に総司は真っ白になった。今がいつで、ここがどこか、ということが吹っ飛びとにかく千鶴に触れて千鶴をむちゃくちゃに愛したくてたまらなくなる。
総司の手が千鶴のTシャツの下にもぐりこむ。素肌の感触を確かめるようにウエストをなでそろそろとブラジャーにつつまれた胸へと進む。
唇を離してちらっと千鶴の表情を確かめると、顔を真っ赤にさせて胸と大きく上下させて浅い息をくりかえしている。もともと黒目がちの瞳が潤んで、頼りなげなすがる様な瞳をしていた。
ブラのカップに手を入れて、胸の先端を中指の腹でそっと撫でると、合わせた唇から小さく息を呑む感覚が伝わってきた。悩ましい彼女の反応に総司は夢中になった。自分の羽織っていた長そでのジャージを脱いで千鶴のブラのホックに手をのばし……。

ガチャガチャ!
「これで全部ー?」
「うん、最後。アー疲れた」

跳び箱の向こう、倉庫の入口から他の生徒たちの声が突然聞こえた。千鶴と総司は思わず固まる。
「バスケすごかったよね〜」
「三年生でしょ?」
「バスケ部じゃないってほんとかなぁ」
「剣道部だってよ」
「え〜?」
だんだん遠くなっていく会話に二人は目を見合わせておでことおでこを合わせた。どちらからともなく小さく溜息をついて苦笑いをする。総司はそのまま再び千鶴の唇に唇を寄せる。

ガチャガチャ……ガチャン!

最後の鍵のかけられる音に、唇をあわせたまま千鶴は目を見開いた。かまわずキスをしてくる総司の肩を少し押して、唇を離す。
「お、沖田先輩、今……鍵かけた音しませんでした?」
総司はキスの続きに夢中で、千鶴の言葉に生返事をした。
「んー?大丈夫だよ。それより千鶴ちゃんこっち……」
「だ、大丈夫じゃないですよ!閉じ込められちゃったんじゃないですか?」
千鶴は手を伸ばしてくる総司をよけてすっくとたちあがって入口まで小走りで移動する。そしてドアをひいてみると……。

「開かない……」

千鶴は青ざめた。

今はもう薄暗い。なんとかしないと……。

「お、沖田先輩携帯は……?」
「あー、しまった……!」
総司は頭をかかえてしゃがみこんでいた。その姿に携帯を持っていないのだと思い、千鶴はさらに焦る。
「ど、どうしよう……、とりあえず扉をたたいて気づいてもらうしか……」
言いかけた言葉は総司の次の言葉で途切れた。
「ゴム持って来ればよかった!!」
「……は?」
総司は千鶴を見て熱を入れて話す。
「千鶴ちゃんを追っかける前に財布を持っていこうか散々迷ったんだよ!でもすぐだし…と思って置いて来ちゃったんだ。財布の中にゴム入ってたのに……!あー!僕のバカ……。まさかこんな展開になるなんて思っていなくて……」
なんだか真剣に自己嫌悪に陥ってる総司に千鶴は呆れながら言った。
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!とにかく外に出ないと……。誰かに鍵を持ってきてもらわないと出られないんですよ?」
「それだ!」
千鶴の言葉に、総司は指をパチンと鳴らして答えた。
「持ってきてもらおう!平助あたりにさ!」

 ……もうこの人と話してもだめた。

そう思った千鶴は、右側の壁の高い位置にある唯一の窓の方へと歩いた。誰かいませんかー!!と呼びかけてみる。
もちろん返事はない。
「誰か……」
もう一度呼びながら総司の方をちらっと見ると……。

総司は携帯電話を取り出して、操作していた。
「お、沖田先輩……!」
「え?」
「携帯持ってたんですか!もう!!出られるんじゃないですか!早く鍵持ってきてもらえるよう電話を……」


千鶴の言葉に総司は一瞬キョトンとした。しばらくして意味がわかったのか、ゆっくりとほほ笑む。

あ……。なんか黒い……。

千鶴は思わず後ずさりをした。

 「……千鶴ちゃん、携帯欲しいの?」
「……欲しいっていうか…。先輩は……だって……」
総司が何を言っているのかわけのわからない千鶴は口ごもる。
「千鶴ちゃんがどうしてもっていうなら、これ貸してあげるよ」
そう言って総司はスライド式の黒い携帯を千鶴の前に差し出した。

 私が……っていうより二人ともこれがないと困るのに……。

 そう言いながらも早く連絡を取って外にでなくては、と思う千鶴は携帯に手をのばした。と、総司は千鶴の手が触れる寸前に携帯をスッと上にあげてしまう。
「そのかわり、千鶴ちゃんが言うこと聞いてくれたら。そしたら貸してあげるよ」
悪戯っぽくほほえみながら言う総司に、今度は千鶴がキョトンとする。
「……そのかわりって……先輩だって外の人と連絡とってここから出ないと……」
「僕は全然平気。どうせ明日には開くだろうし、今は夜になってもそんなに寒くないし。一晩千鶴ちゃんとここにいるのも楽しそうだし」
総司の言葉に千鶴はあんぐりと口を開けた。総司は楽しそうに続ける。
「でも千鶴ちゃんがど〜しても出たいっていうんなら、貸してあげる、携帯。その変わり千鶴ちゃんが楽しいことを一緒にしてくれて、僕が満足したらね?」
「……た、楽しいことって……」
「大丈夫。ゴムなくてもお互い満足する方法はいろいろあるし。ここはマットも跳び箱もあるからきっと楽しいよ。ね?」

 


 結局千鶴が携帯電話を貸してもらうことができたのは、総司がたっぷり満足した後だった。
せっかく携帯を渡してもらえても、頬を染めて目を潤ませてぐったりしている千鶴は、しばらくたたないと電話をかけることができなかった……。











【終】 


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