【お礼企画 妄想大部屋 3】 





 

■世間一般的に言って前世で一番いい夫だったのは誰か■


平助が一番に手を挙げた。
「金とかそーゆーのは無しにしようぜ。そんなん言い出したら新選組じゃない風間だけになるじゃん」
風間が反論する。
「何を言っている。今の時代のように『家事に協力的か』とか『ゴミだしをしてくれるか』などという現代の価値観で前世をはかれるわけはないではないか。しかし経済力は違う。いつの時代でも妻というものに十分な衣食住を与えるのは夫として最低限の義務だ。それさえ果たせていないようなヤツは土俵にのる資格すらない」
平助は困ったように頭を掻いた。
「う〜ん、まぁそうだけどよ〜。俺、どうなんだろう?羅刹だったけど発作はもうなくなってたし健康だったし若かったから多分働いたと思うんだけどな〜」
左之も困惑したように視線を巡らす。
「大陸に渡ったけどよ、言葉もわからねぇしなぁ。自給自足……?にしても知識もなにもねぇしなぁ。槍でも近所のガキどもに教えてたのかもしれねぇなぁ。贅沢させてやったとは……いえねぇな」
総司は溜息をつく。
「僕全然いいとこなしなんだけど……。羅刹な上に労咳だから無理もできないしねぇ。千鶴と内職でもしてたのかなぁ?」
土方も、この回だけは眉間に皺をよせて顎を撫でながら困ったように言った。
「俺もなぁ……史実では死んじまってるからなぁ……。『土方』って名前も使えねぇし……石田散薬でも作って売ってたのかもしれねぇが……まぁしょぼいな……」
「俺は統領だからな。ここも俺がもらうとするか」
風間が余裕で言うと、総司が反論した。
「統領って却って大変なんじゃないの?そんなに裕福ってわけじゃないだろうしいろんな力関係やら策略やらうずまいてたりしてさ」
土方もうなずいた。
「そうだな、トップは何かとたいへんだ。トップの妻もな。跡継ぎ争いとかもあるだろうし旦那は仕事で忙しいだろうし……」
平助も言う。
「千鶴にはそんな世界は似合わねーよ。普通に仲良く暮らしていく方がいいんじゃね?」
「うぬぬぬぬ……」
確かにそういう面も否定できず風間は唸り黙ってしまった。
そこに、斎藤が『ピンクレモネード』の最後の一滴を飲み干して、余裕のほほえみを浮かべて言った。
「俺は千鶴と二人で平凡ながらも幸せな生活を送り、その上職がありました」
「職があったって言っても極寒の土地でだろ?いくらもらってたのかしらねぇが千鶴に全く苦労がなかったなんでありえねぇ」
土方がそう言うと、斎藤は申し訳なさそうに土方を見つつもきっぱりと言った。
「確かに新選組の時にいただいていた給金から考えると雲泥の差でした。しかし……」
斎藤はそう言い、そこで一拍溜めると続ける。
「……公務員です」
皆に稲光のような衝撃が走った。平助が拳を握りしめながら悔しそうに言う。
「……そうかっっ……『安定収入』……!!」
「すまない、皆」
申し訳なさそうに、しかし若干鼻を高くしつつ斎藤は謝った。


((((くそうっ!俺もあの時会津に残ればよかったっっっ!!))))


 

 

 


土方が言う。
「さて……結果は、
(1)誰のルートが一番千鶴は幸せだったか?……原田左之助
(2)俺たちがどれだけ千鶴を好きなのか……風間千景
(3)世間一般的言って前世で一番いい夫だったのは誰か……斎藤一
となったが……。これはRRAのちょーーーーーーー勝手な妄想で更に最悪なことに深く考えて出した結論じゃねぇから皆さらっと流してほしい」
「土方さん、誰にしゃべってるんですか」
総司の突っ込みにはかまわず、土方は続けた。
「この結果は結果として、最後に一番重要なのは千鶴の意見だ。千鶴は……前世では誰が一番好きで、現世では誰と一緒になりてぇのか聞く必要があるな」
総司が鼻に皺を寄せて言う。
「なんですか、その『最後の質問に答えた人は得点10倍!』みたいなこれまでの努力を無にするようなルールは」
「いや、でも確かにそれは重要だぜ」
左之が言った。斎藤も頷く。平助は肩をすくめていう。
「ひ〜!聞くの怖ぇぇぇ〜!!」
風間が千鶴の顔を見て言った。

「我妻よ、お前は誰が一番好きなのだ」


千鶴は困った顔をして自分を見つめる12個の瞳を見つめ返した。下を向き、横を向き……しばらく戸惑ったようにあちこち視線を彷徨わせた後、桜色の唇を開いた。

「……沖田さんです」

「ほんとぉぉぉぉぉっ!!」(←総司。一番驚いている)
「「「まじかよっ!」」」(←土方さん、平助くん、左之さん)
ガックリ……… (←斎藤さん、ちー様)

土方が口をパクパクさせながら、千鶴を見る。なんとか声をだそうとするがショックのあまりなかなか声がでない。
ようやくしぼりだした、その言葉は……
「……な、なんで…だ……」

千鶴は土方を申し訳なさそうに見ながら答えた。
「ここは沖千サイトですし……私、結構気を使うほうなんで……」
千鶴の言葉に今度は総司が固まった。
他の5人は一斉にほっとしたように体の力を抜く。平助と原田は「なーんだ、あせったぁ!」「なあ!」と言いながらお互いに笑い合っている。
背中を向けて蹲ってしまった総司に、千鶴は焦ったように言った。
「で、でも……!大好きなのは本当です。今も昔もいつもどこかつかめなくて、でも真っ直ぐでいさぎよくて……。見ているだけでドキドキします。大事な人以外に対して残酷で冷たいのも、実は特別扱いみたいで嬉しかったりしますし、中にはいっちゃうととことん甘やかしてくれるところも……ギャップ萌え……って言うんでしょうか?それともツンデレ?とにかくしびれます。冷たく落とされてその後甘く上げられると脳内快楽物質がどっと放出されるのを感じるんです。そのくせ甘えんぼでほっとけなくて……ん〜!!もう!大好きっ!て悶えちゃいますよね」
「……ホント?」
おずおずと振り返る総司に、千鶴は励ますようにうなずいた。
「ホントです。大好きです!」
「そっか〜、やっぱりね。じゃ現世では僕がちづるちゃんをもらうってことでいいよね?」

「まて、我妻よ」
風間のストップが入る。
「お前は沖田のことを『大好き』とは言ったが『一番好き』とは言っていないな?では一番好きなのは誰なのだ。俺の事はどう思っている」
皆の目が千鶴に集まる。千鶴は、んー…と顎に人差し指をあてて考えるように視線をめぐらせた。
「……そうですね。千景さんは……俺様ですけどさっきの結果どおりかなり自分をまげて私を大事にしてくださったと思っています。最初は女鬼だからかと少しさみしく思っていたのですが一緒に蝦夷まで旅している間に、だいぶ扱い方になれてきました。うるさそうにしているくせに実は構ってもらいたがりだったり怒りながらも嬉しそうに私のわがままを聞いてくださったり……素直になれない俺様って言うんでしょうか?そしてさすがに統領だけあって気配りや目配りが行き届いていて千景さんの腕の中では私は安心して好きに動けた気がします。本当に……素敵な旦那様でした。ちょっと扱いが面倒でしたけど」
悪戯っぽくそういう千鶴に、風間は「フン…」と言いながらもそこはかとなく嬉しそうに『赤いハーブティ(ローズヒップブレンド)』をすすった。


「千鶴!俺はどうなんだよ!俺だって仲良し夫婦だったよな?」
平助が我慢できずに千鶴に聞いた。千鶴は嬉しそうににっこり笑って頷く。
「平助君はほんとうに大好きだよ!屯所に来たばっかりのころから平助くんといると楽しくて遊びに来てくれるととっても嬉しかった。ありがとね。他の隊士の人達がみんな私の一歩前を歩いていて私が必死に追いかけてるイメージだったけど、平助君だけはいつも後ろを気にして隣を手をつないであるいてくれたよね。悩みや迷いも素直に話してくれて……。そのせいで私、自分が役立たずだなんて思わずに平助君の傍に居られた気がする。島原に結構行ってたくせに私の前では純情少年でそこもまた可愛くてうれしくて……。きっと何年たっても平助んとなら同じように一緒に歩いて行けると思う」
千鶴の手放しの褒め言葉に、平助はへへっと鼻の下をこすって笑った。

「千鶴、平助ばっかずるいぜ。俺はどうなんだよ」
左之が親指で自分の胸をさしながらファミレスのテーブルに身を乗り出した。
「左之助さんは……、女の子として守られる快感をこれでもかっと味わわせてくださいました。動く18禁と言われるくらい仕草も雰囲気も色っぽくて、そんな人に女の子扱いされただけで男性に慣れていない私はぽーっとなっちゃいました。特にあの声が色っぽくて……そのくせ剣も槍も強くて男っぽくて素敵ですし、新八さんや平助君と仲のいいところも仔犬がじゃれれてるみたいでかわいくて…。私を連れて屯所を出た時も大陸に渡る時も迷いがなくてほんと頼りになる旦那様です。唯一心配なのは、とっても色っぽくて女性には誰にでも優しいので、そこが……浮気とかちょっと心配かな」
千鶴がそう言うと、左之はファミレスの机の上から手を伸ばして千鶴の手をそっと掴んだ。
「…俺にはおまえだけだってわかってるだろ……?」
千鶴は左之にまっすぐに見つめられて、恥ずかしそうに頬を染めるとコクンとうなずいた。それを見て左之も笑顔になる。そして握っていた指を絡めようとした時、上から土方の手刀が左之の手首に振り下ろされた。

「人の物に勝手にさわるんじゃねぇ」
土方はそう言うと、左之の手を千鶴から無理矢理はがして千鶴を見た。
「聞くまでもねぇと思っちゃいるが……当然一番は俺だろ?」
千鶴は土方のひきこまれるような紫紺の瞳をうっとりとみつめる。
「歳三さんは…人間としても男性としても本当に憧れて尊敬していたので、そんな方が旦那様だなんてまるで私の方こそ春の月を手に入れたような感じがします。あの時代で名もない農民から京で知らない人のいない新選組副長にまでなられたその実行力と、新選組をあそこまで大きくしてまとめあげた手腕、剣の腕に視野の広さ、なにからなにまで魅力的です。現世で新選組といえば土方さんというくらい恋愛以外の要素で素晴らしい人だと思っています。でも素晴らし過ぎて背負う物が多すぎて……なんとか支えになりたいとがんばった私を認めてくださったのが嬉しくて今でもはっきり覚えています。歳三さんを好きになったおかげで、私も歳三さんに見合うくらいの女になりたいと思ってがんばって……歳三さんのおかげで私も成長できたと思うんです。これからも歳三さんに飽きられないように努力しないとって思います」
真っ直ぐ土方の瞳を見つめて健気に言う千鶴に、土方は照れ臭そうにうなずいた。
「いや、そんなたいそうなもんじゃねぇよ。俺なんざお前がいなけりゃ抜け殻だ」
「歳三さん……」
見つめあう二人をさえぎるように、斎藤の静かな声が響いた。

「終わりましたか、副長。それでは僭越ながら自分がトリを務めさせていただきます。千鶴、俺についてはどう思っていたのだ」
心の奥まで見透かしてしまいそうな蒼い瞳。千鶴は斎藤を見て微笑んだ。
「一さん……一さんと私はどこか似ているというのか……理解がしやすくて一緒にいて楽です。仕事に真面目に取り組むところも素敵だなって思いますし極端なまでの責任感にストイックさ……しびれます。一緒にいていつも張りつめている神経を安らげて上げたいって思っちゃいます。一番安定感があるんじゃないでしょうか。たとえ私がとどのような鬼嫁になったとしても一さんは文句も言わず見捨てないでくださると確信が持てるんです。人生ってこの先なにがあるかわからないですけど、一さんとなら一緒に荒波を超えて行けると思うんです」
千鶴がそう言うと、一は恥ずかしそうに微笑んだ。
「……有難う。そう言ってもらえると嬉しい。でもできればとどのような鬼嫁にはならないでくれるとありがたい。というか千鶴はいつまでも可愛らしいに決まっているな」

いらいらと皆の回答が終わるのを待っていた総司が、待ちかねたように口をはさんだ。
「で、結局誰が一番なのさ?」
千鶴は困ったように皆を見渡した。
「……それが……皆違って皆いい、という金子みすず状態なんです。誰か一人を選ぶなんてできません」
総司は千鶴の返答に溜息をついた。
「だと思った。もう僕でいいんじゃない?」
「あほか!俺に決まってんだろっ」
「ふざけたことを言っているバカどもめ。千鶴は我妻に決まっているだろう」
「おいおい、ふざけたこと言っているのはあんただろ。千鶴は俺の子供の母親だよ」
「これだけはゆずることはできん。千鶴は俺の嫁だ」
言い合いになり誰も一歩も譲らず喧々諤々意見交換という名の怒鳴りあいが始まりそうになった時、土方が言った。
「あーわかったわかった!てめーら落ち着け!落ち着いて話しあおうじゃねぇか。じゃんけんできめるのはどうだ?」
土方のアイディアに風間が異議を唱えた。
「ダメだ!何回勝負かでまず意見がわかれるし、後だしとかしそうなやつらばかりだ!」
風間の台詞に左之が呆れたように呟いた。
「……小学生かよ……」
「ではくじ引きかあみだにしてはどうだろうか?」
斎藤が提案すると総司が否定した。
「それこそ不正の温床だよ。もともとこれは幕末の剣士たちの話なんだし、ここはやっぱり剣で勝負をつけるのが筋なんじゃない?」
総司の言葉に平助が文句を言う。
「ずりーぞ!総司!!そんなんお前が有利にきまってんじゃん!だいたい現代で剣が強くたってなんのメリットもねーし!通帳見せ合いっこして貯金が一番多い奴、とかにした方がまだ意味わかるよ」

「じゃあみんなで共有ってのはどうだ?」
左之がそう言うと、皆がどういう意味だ?と言い合いをやめて左之を見た。
左之はうなずいて説明を始める。

「つまりさ、月曜は土方さん、火曜は総司、水曜は斎藤、木曜は平助、金曜は俺、土曜は風間って感じで千鶴を持ち回りにするんだよ。これなら公平だろ?」

か、体がもちません……!!

千鶴が青ざめていると救いの言葉が聞こえた。
「異議あり!!」
土方、総司、斎藤、平助が猛然と異議を唱えた。千鶴はほっとして、涙で潤んだ瞳で四人を見る。

「何で僕が火曜なワケ?超平日でまだまだ一週間ながいな〜っていう最悪のときじゃない。千鶴ちゃんとまったりできないよ!僕は土曜日がいい!」
「俺だってそうだよ。月曜日なんざ日曜日とのギャップでブルーマンデーっていう言葉があるくらいブルーな日じゃねぇか。そんな千鶴はいやだぜ」
「水曜日だって最悪だ。ちょうど平日の真ん中で、いろんな家事がたまってくるころだ。仕事が終わって家事をやったらその日が終わってしまう。いや、家事自体は嫌いではないが、千鶴と二人でのんびりいちゃいちゃしたいと思うのは当然だと思うが。ちなみに俺は日曜日希望だ」
「木曜なんて体力的に一番疲れてるとこじゃん!せっかく千鶴がいるのにぐったり…なんて俺いやだ!土曜でも日曜でもどっちでもいいけど、次の日休みっていう解放感がある土曜日がいいかな」

皆が口々に言う、曜日に対する不満に、千鶴はがっくりと俯いた。

そっち(曜日)ですか……。私の体を心配してくださる人はいないんですね……


「土曜は俺と決まっているのだ。変更はできん!」
風間が言うと一斉にブーイングがあがった。
「なんで決まってるんだよ!横暴だ!」
「じゃんけんで決めようよ!」
「だからそれは後出しとか何回勝負にするか問題がだな……」
「ではくじ引きがあみだでは…」
「だーー!だからそれは不正があるって言ったろ!」

「ああーー!!もう静かにしろ!これじゃあループじゃねぇか!いいか!誰がどの曜日にするかはこれから考えるとして、俺ぁ気になってることがあるんだよっ」
土方の言葉に皆言葉を止めて彼を見た。土方は皆を見渡して言う。
「俺たちは6人、曜日は7日。一日余るんだよ。これはどうすんだ?誰かが二日じゃ不公平だろうしな」
左之が腕を組みながら言った。
「うーん……しゃくだが、もう一人……攻略キャラじゃない奴を加えるしかねぇんじゃねぇか?」
左之がそう言うと皆は顔を見合わせた。

もう一人……誰がいいだろうか。人気的に言うと新八…?いやルートを切望されていてそのせいで随想録と黎明禄で飛躍的に出番が増えた山崎がいる。それに密かにマニアックな人気がある山南さんという選択肢もある。いやいやそれを言うなら不知火だ。意外に義侠心があり人気がある。大穴で天霧もいけるかも……。禁断と言う意味では薫も需要があるかもしれないな……

皆の妄想が渦巻く中、土方が千鶴に聞いた。
「千鶴……もう一人付け加えるとしたら……だれがいいんだ?」
土方の質問に、もうどうでもいいやと自分のカラダの心配を投げた千鶴は目をまたたいた。
暫く考えた後、恥ずかしそうに頬を染めて俯く。そして小さい声で言った。
「あ、あの……げ、源さん……が、いい、です……」

!!!!!!

皆が驚愕のあまり固まっているのに気が付かず、千鶴は続けた。
「わ、私ちょっとファザコン気味、なのかも……しれないですね……」


「『しぼりたてキウイフレッシュ』お待たせしました〜」
皆の沈黙を破ってウエイトレスの声が響く。

トンッと音を立てておかれたその緑の飲み物を、皆は沈黙のまま見つめていたのだった。

 

 

 

 

………まさかの源さんオチ

 

 

 

 






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