実録!隣の晩御飯〜あなたのメインディッシュとオカズはなんですか?〜2(風間編)


 


「で は、明日成田でお待ちしています」
家の前で停まったベンツから風間が降りたとき、車の中から天霧が声をかけた。
「ああ、ロンドンか。二週間だったな」
風間がそう言うと、天霧は頷いた。
「そうです。書類一式は私が用意します。それとそのケーキですが」
天霧はそう言い、風間が持っている白いケーキの箱を指差した。
「最近女子に話題の天使のロールケーキと言う商品なのですが、賞味期限が本日中となっています。一本買ってしまったので食べきれないかもしれませんができるだけ本日中にお願いします」
「わかったわかった。千鶴は甘いものが好きだから一人でいけるだろう」
風間がそう言い軽く手を振ると、ベンツは走り去った。

あやつは甘いものが好きだからな。昨日はなにやらあのDVDの事で怒っていたし、これでも食べれば機嫌がなおるだろう。

いつもよりかなり早く会社から帰った風間は、いつも通り玄関のチャイムを鳴らす。鍵を持って行ったとしても、彼はけっして自分で鍵をあけて家にはいるようなことはしない。千鶴に開けてもらいたいのだ。ドアをあけて『おかえりなさい』⇒笑顔。のコンボは何度見てもいいものだ。
いつもより長い時間待たされて、風間がもう一度チャイムを鳴らそうかと思った時、ようやく中から扉が開いた。
「ちっ千景さん…!」
「……」
ドアを開けた我妻は、艶めかしい朱色の襦袢一枚の姿だった。
風間は思わず持っていたケーキを落としそうになったが、かろうじて我に返り急いで玄関の中に身を滑り込ませる。そしてかなりはやい夫の突然の帰宅に真っ赤になってうろたえている千鶴をじろりと見た。
「……それは何のマネだ」
風間が帰ってくる時間ならまだしも、今日はいつもより三時間は早い帰宅だ。帰って見たら妻は見たことのない恰好をしてなにやら慌てて……
「まさか奥に男でもいるのではないだろうな」
「いっいるわけないじゃないですか!!」
憤然と言い返した千鶴を見て、風間はあっさりと信じた。嘘をついているようには見えない。
「では何故そんな恰好をしているのだ。お前の和服姿など俺は見たことは無いぞ」
結婚式はウェディングドレスだったのだ。新年も千鶴は洋服で、着物を持っているなど初めて知った。
「……成人式の時の着物を実家から持ってきたんです」
「何故だ」
「……」
「言えないのか」
靴を脱ぎ廊下を歩き出すと長襦袢姿の千鶴も後ろをついてくる。風間はそれをちらりと横目で見た。

……しかし色っぽい。目が離せなくなるほどだ。
いつもの洋服では千鶴が決して選ばないような朱色がとてもあだっぽく見えて、着付けの途中だったせいで襟がかなりぬいてあって、少し赤らめた頬に真白なうなじ。
風間は知らず知らずごくりと唾を飲んだ。
千鶴は風間のそんな視線には気づいていないようで、気まずそうな顔をしたまま小さな声で言った。
「……昨日の……あのDVDの女の人が着物を着てたので……」
今度は風間が黙る番だった。立ち止まった風間に、千鶴は言う。
「千景さん昨日『お前には無理だ』って言いましたけど、無理じゃないって言いたかったんです」
「……」
千鶴の言葉を聞いて、風間は唖然とした。無理じゃないと言いたかったから着物を…とは、つまり千鶴は……?
「そんなに俺の処理用のネタになりたいのか」
風間の呆れたような言葉に、千鶴の頬はパッと朱色に染まった。それが千鶴をさらに色っぽく見せて風間は下腹の辺りに火がともるのを感じる。
「そんなんじゃありません!そんなんじゃなくて……そうじゃないんです」
「じゃあなんなんだ」
「……だから……処理もそうじゃないのも、どっちも私を……私で……やって欲しいんです!」
最後はもうやけくそ気味に千鶴は真っ赤な顔で風間を睨むように見上げた。『何か文句ありますか!?』とでもいいたげに頬を膨らませて。
風間の唇がニヤリと孤を描く。
「そうか。やきもちか」
風間はそう言うと、空いている方の手を千鶴の後ろの壁につき、千鶴を自分と壁の間に閉じ込める。そして彼女の顔を覗き込んだ。
「あのDVDの女にやきもちをやいていたのか」
「……」
『違う』とも言えず『そう』とも言いたくない。
千鶴はぷいっと赤い顔のまま横を向いた。風間はそのまま彼女の頬へと頬を寄せ、耳元で低くささやく。
「……では遠慮なく使わせてもらうとしよう」


「あ、まっ待って……!まだ私着物を……!」
寝室の扉を開けて千鶴を中に入れた風間に、千鶴は振り向いてそう言った。
「『処理用』はそんな面倒なことは言わないものだぞ。男の欲望のままに好きなようにされるものだ」
「あっ…!」
後ろから抱きすくめられ、八つ口からするりと風間の大きな手が入り込む。当然ながらブラをしていない胸は、あっけなく風間に征服された。
「で、でも、タコとかはちみつとか……!」
千鶴が風間の手を離そうとしながらそう言うと、風間はピタリと動きを止めた。
「まさか、買ってきているのか?」
驚いたように覗き込んでくる夫の表情に、千鶴はまたもや赤くなった。そして気まずそうに頷く。
途端に風間が笑い出した。
「あっははははは!そうか!タコとはちみつを……!そうか…!お前は面白い女だな」
「だっだって…!無理って言われたから無理じゃないです!って言いたくて……!」
千鶴は風間の腕の中で振り向いて、大笑いしている彼を叩こうとした。しかし一瞬早くその手首を彼がつかみ、すぐ後ろにあるクィーンサイズのベッドに千鶴を押し倒す。
「そうか、頑張ったのだな。だがタコもはちみつもお前には合わんな。お前は……」
風間はそう言うと、千鶴が起き上れないよう上にのしかかったままでベッドサイドテーブルに置いた、天霧推薦のロールケーキの箱を開けた。
そのロールケーキは外周のスポンジの中は全て、とろりと甘いクリームとイチゴがつまっているタイプのロールケーキだ。風間はそのクリームに長い中指をいれると、ゆっくりと掻きだすようにクリームを指につけた。
何をするのかと見ていた千鶴は、ケーキの箱に書いてある店名に気づいた。
「あ、そのケーキ屋さん…!今すごく有名なお店です。私も食べたくて……あっ」
襦袢がはだけた白い千鶴の胸元に、風間がクリームを塗りつけた。そのひんやりとした感触に千鶴は思わず小さく声をあげる。
「そうか。では食べさせてもらおう」
千鶴の胸に塗りつけたクリームを、風間はなめとるようにしてゆっくりと食べていく。
「あっ……はっ…あ…」
胸のふくらみをなめ、風間はクリームをすっかりきれいにする。
「いや……ちゃんとケーキ…食べましょう?そんな……」
「こっちの方が甘いな」
風間はそう言うと、今度はクリームのついていない胸の先端を口に含み、執拗になめ始めた。



◇◇◇◇


朝、朝食を作ろうとベッドから抜け出そうとした千鶴は、手首を掴まれまた暖かい胸の中に引き戻された。
寝起きで少し掠れた夫の低い声が耳元でささやく。
「……どこへ行く」
「朝ごはんを作らないと……千景さん、今日からイギリスに出張なんですよね?」
同じく囁き返した千鶴を抱き寄せて、風間は体勢を変えた。
「……まだこれを着ているのか」
薄暗い朝の光の中で、昨夜の寝乱れた襦袢姿の千鶴がぼんやりと浮かび上がる。千鶴は恥しそうに頬を染めた。
「だって…千景さんが着ていろって言ったんですよ」
胸元すれすれにはだけた襦袢に裾を割ってむき出しの太もも。これは体を隠すと言うよりは男の欲望を刺激するために身にまとっているようなものだ。昨夜の甘いケーキの匂いがふっとしたような気がして、風間の瞳の色は濃くなった。
大きな手が滑らかな千鶴の太ももを撫で上へと上っていく。
「朝飯はいらん。そのかわりこれをいただこう」
風間はそう言って頭を下げると、千鶴の胸をペロリと舐めた。
「あっま、待って…!そんな朝から……!」
「朝からなんだというのだ」
「だって、だって、千景さん朝ごはん食べないと…」
「朝飯は成田でも飛行機の中でも食べられるが、これはこれから二週間食べられんからな」
ぐいっと千鶴の足を腕で持ち上げ、風間は自分の腰で抗う彼女を抑えた。朱色の長じゅばんから出ている白い肌がなまめかしい。
風間はたっぷりと朝飯を楽しんだのだった。


「では行ってくる」
家の前に到着したとの迎えの車からの電話で、風間は玄関へと向かった。
あの後一緒に朝風呂に入り、そこでもいろいろと楽しいことをして千鶴は朝からぐったりしていた。それに引き替え風間はフル充電されたようにピカピカだ。
靴を履きながら風間はふと思い出したようにスマホを取り出し操作した。何をしているのかと千鶴が見ていると、彼は目当ての画面が出てきたのか「よし、撮れてるな」と呟くと、それを千鶴に差し出す。何が撮れているのかと千鶴は覗き込む。そこに映っている物を見て千鶴は固まった。
「………」
「よく撮れているだろう?」
「……これは……私の……」
そこに映っているのは、昨夜の襦袢姿の千鶴だった。肩がむき出しのまま襦袢を羽織っている寝乱れた寝姿や、寝顔のアップ。それにいつ撮ったのか昨夜途中でシャワーを浴びに行くときの長襦袢を着て立っている姿や……なんと最中の悩ましいショットまであるではないか。
しかも全部千鶴がカメラ目線ではないと言うことは、これはいわゆる盗撮と言ってもいいだろう。
あまりのことにアワアワと口を開いたり閉めたりしながら千鶴は言葉にならない言葉で、夫に訴える。風間は『嬉しいだろう』とでもいいたげな微笑みで千鶴にうなずいた。
「そうだ、お前の写真だ。俺の処理用、というわけだな」
「……処理用……」
「お前が言ったのだろう?処理用もそうでないのもお前を使えと。これから二週間はこれで処理することとしよう」
「……こ、これで、その…千景さんは……」
「そうだ。ああ、それと俺の部屋の右にある棚の右側のところに俺のコレクションがある。俺がいないときにでも見ておいてバリエーションを増やせるよう見ておくといい」
「……これくしょん…」
「では、俺は行ってくるぞ」
「……行ってらっしゃい……」

茫然と夫を見送った後、千鶴は茫然としたまま先程夫に言われた棚を開けてみた。
中にあったのは当然のように、エロDVDの数々で……・
「……」
風間のいない二週間の間にそれを視聴した千鶴は、夫の性癖と男の生態についていろいろ考えさせられたのだった。








風間は千鶴の処理ネタを手に入れた!
千鶴も風間に毒された!
鬼夫婦は子だくさんになった!

作:RRA






BACK



戻る