【子龍でドッキリ!】

  

子龍ルートが想定外に萌えまくりで転がっています。コンプ記念にSSを書いてみました。
注意※かっこいい子龍くんはいません。かなりのおふざけ&下ネタ&艶表現がありますのでお気を付け下さい。
ED後の子龍×花です。






自分の杯にドバドバと注がれた酒を見て、子龍は眉をしかめた。
溢れた酒が手にこぼれている。しかし注いている相手はそんなことも気にせずに機嫌よく子龍の肩を叩いた。
「あっ」
その拍子にさらに酒が毀れる。子龍が拭くものがないかとあたりを見渡していると、相手が機嫌よく話し出した。
「いやあ、まさか本当に子龍が軍師殿をおとすとはなあ!見直したぞ」
隣に座っている年かさの兵士も首を突き出して話に入ってくる。
「ほんとだな!ったくいつのまにそんな風になってたんだよ」
「いやいや、俺は気づいてたぜ。よく二人で話してたし、ある時を境に急に軍師様の子龍に対する態度が……こう、くだけたっつーかさ。あーこの二人思い合ってんなあと思ってたもんだよ」
「まあめでたいことだな!」
「そうだな。おめでとう!」
口々にそう言うと、皆は一斉に杯をあけた。
子龍はそれを見て微笑む。
まあ、酔っているせいで無遠慮にはなっているが、基本みんないい奴なのだ。
昼間にあった子龍と花の婚儀にも出席してくれて、今はその宴会の席なのだから主賓の子龍に絡んでくるのはしょうがないのだろう。
子龍は自分も盃をあけた。
向かいに座っている兵士が、空いた杯を満たすと意味深なほほえみを浮かべて子龍の顔を覗き込んだ。
「で?……大丈夫なんだろうな?今夜は」
子龍は杯に酒を注いでくれたことを目礼で感謝すると、静かな声で答えた。
「大丈夫…とは?どういう意味ですか?」
「なーに言ってるんだよ!」
ぎゃっはっはっ!と笑いが弾け、子龍の周りを取り囲んでいる男性陣が思わせぶりに目配せをする。
「……あれだろ?……新婚初夜!」
「おまえ素人の娘との経験はあるのか?初めての娘は気を付けてやらないといけないんだぞ」
「なに言ってるんだよ!お前は商売女としか経験がないくせに」
「いや、おれは妻がいるがそれは本当だぞ。女にとってのはじめてはかなり痛いらしい。うちのは最初の夜はうまくいかなくてなあ」
一番年かさの妻帯者が頭をかきながらそう言うと、同じく妻がいる兵士たちが『うんうん』とうなずいている。
「俺の母ちゃんはしばらく歩けなかったな」
「おれのもだ。最初の頃は毎回痛そうだったなあ」
「おお、だけどそれが次第に……な?」
一人がそう言った途端、他の皆が鼻の下をのばしデヘーッとしたにやけ顔になる。
「そうそう、その後がなあ」
「かー!うらやましいぜ子龍!あの軍師どのと……あれ?子龍?」
思いっきり背中を叩こうとした兵士は、子龍がいなくなっていることに初めて気づき辺りを見渡す。
子龍が先ほどまで持っていた杯が、空になった状態で残っているだけだった。

 

「あれ?子龍殿?このようなところで何を?」
うっすらと酔いが回った気持ちのいい状態で裏庭にぶらりと出た孔明は、廊下からは影になっている階段に子龍が座っているのを見つけた。
その声に子龍が振り向く。
月明かりを受けて、彼の金色の髪がキラキラと輝いた。
孔明は『よっと』声をかけると、子龍の隣に座る。
「どーしたの?」
孔明がそう言うと、子龍は溜息をついてまた前を向いた。
「最後はあなたですか……」
子龍の言葉に、公明は首をかしげた。
「最後って?他にも誰か来たの?」
「……最初は雲長殿が。次に翼徳殿、そして玄徳殿。それから今、孔明殿が」
「へえ?……みんな子龍殿に『どうしたのか』って聞いたんでしょ?」
子龍は少し驚いたように孔明の顔を見た。
「ええ、その通りです。何故それを?」
「だって君の顔。『悩んでます』って書いてあるからさ。結婚式を挙げたばかりの花婿がそんな浮かない顔をしてればそりゃあみんな聞くだろうね」
孔明の言葉を聞いて、子龍は前の地面へと視線を移した。目じりが少し赤い。
「……そんなにすぐにわかりますか」
「まあね、で?何があったの?」
「……」
孔明に促されて、子龍はぽつりぽつりと話だした。雲長や翼徳、玄徳たちに話したのと同じ話を。
夫婦の営みというのは、初めての女人にとってはかなり痛いという話を聞いたこと、自分は彼女を守りたいと思い傍にいること、そんな自分が彼女を傷つけてしまう事、にもかかわらず彼女を欲しいと思う気持ちを止められないこと……

「……なるほど、ね」
孔明は相変わらずの何を考えているのかわからない表情で、後ろ手をついて満月を見上げた。
「でも、そろそろ君たちの結婚を祝う宴もお開きだよ。花嫁はもう二人の部屋で待っているんじゃないかな?」
「……わかっています…!待たせるのは悪いと思っているのですが、じゃあどうすればいいのかわからず……」
「……」
孔明は静かな瞳で月を見上げ、子龍は足元を見て、沈黙があたりを覆う。
「……ボクは……まあ、玄徳軍の軍師だからね。大事な戦力である子龍殿の悩みを解決してあげられるような策を授けることも必要かと思うんだよね」
「あるのですか?」
「……なくはないけどね」

 

 

コトリという音に、花はハッとして出入り口の方を振り向いた。
綺麗に結い上げられて、つけられている豪華な髪飾りがシャランと耳元で音をたてる。ふんわりとした白い薄物一枚の服が心もとない。
花はドキドキと痛いくらいに打っている胸を抑えた。
子龍からプロポーズをされたものの、その後は全く何もなかった。玄徳に結婚の意思を報告し式の日取りが決まると、もとから真面目だった彼は更に真面目になった。
二人きりの時に花からそっと手を握るくらいで。思い余った花が『どうして何もしてくれないのか』と聞いてみると、『玄徳殿にあなたとの結婚の意志を報告した時に、皆はとても喜び祝福してくださいました。それは多分私ならあなたをまかせて大丈夫と信頼していただけたのだと思います。その信頼を式の前にあなたに不埒なことをすることで失くしたくないのです。……だからあなたも…その、結婚するまではあまり触れないでいただけるとありがたいです。触れられますと、その……我慢するのが難しくなるので』
子龍の言いたいことはわかる。わかるけれども……『じゃあ、手をつなぐのはいい、かな?』と花が聞くと、子龍は顔をみるみるうちに赤く染め、横を向いた。『……触れるだけではなく、そういう……可愛らしいことも言わないでいただけるとありがたいです』
その表情が、なんというかとてもかわいくて、花も結婚まではあまり触れたりしないようにしようと我慢していたのだ。そしていざ今から解禁となると、それはそれでものすごく緊張する。
花が目を見開いていると、扉がゆっくり開いて子龍が入ってきた。
「……子龍くん…」
子龍はちらりと花を見ると、恥ずかしそうに目をそらした。花は、子龍が手に何かを持っているのに気が付く。
「それは?何?」
花が聞くと、子龍は初めて気づいたように手に持っていたものを見た。
「こ、これは……これは飲み物です」
「飲みもの?」
「はい。雲長殿から聞いた、痛みをとる効能のある生姜、酒、牛の肝臓、ネギと唐辛子を細かく砕きお湯に溶かしたものです」
「……」
「あなたの…、その、痛みが少しでも和らげば、と思いまして」
「痛み?」
自分はどこか怪我をしていたっけ?と花は不審そうに聞き返した。子龍はうっと言葉につまり、しばらく赤い顔で沈黙した後小さな声で言った。
「……女性は、その、は、は、は、初めて……の時は、とても痛いと聞きましたので………」
子龍の言葉とその恥ずかしそうな様子に、花は彼が何の痛みの事を言っているのかピンときた。そして花も赤くなる。

そ、そうか……その…初めてだもんね。痛いってあっちの世界でも聞いてたし、い、痛いんだよね……

しかし差し出された器に入っている怪しげな物は、とても飲みたいと思うようなものではなかった。試しにそれに鼻を近づけて匂いを嗅いでみると、生臭く青臭く辛いようなツンとするような、味を想像したくないような液体だ。正直これを飲むくらいなら痛いままの方がまだいいのではないかと思う位だ。
「……飲まないのですか」
花が器を持ったまま固まっているのを見て、子龍が声をかけた。花はひきつりながらも笑顔で返した。
「う、うん。ちょっと…熱そうだから冷めるまで待とうかと思って」
子龍は納得したようにうなずいた。
「そうですか。では冷めるのを待つ間に……」
子龍はそう言うと、寝台の前に立っている花の前を通り過ぎて、西向きに開いている窓へと脚を進めた。何をするのかと花が見ていると、子龍は床にひざまずき祈るような仕草をし、うつぶせに寝転んだかと思うとまた立ち上がりひざまずき、祈り寝転び……を繰り返している。
これは夫になったばかりの男性の寝る前に毎日やっている儀式なのか、何をやっているのか聞いていいのかスルーした方が良いのか花は迷い、最終的におずおずと聞いた。
「あの……子龍くん。何をやってるの?」
子龍は、その整った顔をを彼女の方へ向け生真面目に答えた。
「これは祈りです」
「祈り?」
「そうです。翼徳殿から聞いたのです。西方浄土の方角を向いて祈れば痛みは少しはとれるのではないかと。五体投地という最上級の祈り方も聞きましたのでそれをやってみました」
「……」
……まあ、仏様に祈ったところで花の初めての痛みが消えるとは思えないが、心の安定と言う意味では意味がなくもないような全くないような……
「そ、そっか。あの、ありがとう。私のためにいろいろ。でももうそろそろお祈りは充分なんじゃないかな」
「そうでしょうか。では、次の……」
「まだあるの!?」
驚いて聞き返した花に、子龍は頷いた。
「そうです。孔明殿からも玄徳殿からも聞いております。孔明殿の策は二人でやるものだそうなので、花殿にもご協力いただけますか」
そう言って差し出された手を、新婚初夜の花嫁としては拒絶するわけにはいかないだろう。
子龍を、花のことでからかって楽しんでいた孔明の事だ、絶対ふざけた内容だとは思うが……。

そして当然のことながら、それはふざけた内容だった。
子龍は『踊りと体操の中間と孔明殿はおっしゃってました』と言っていたが、これは絶対孔明がその場で適当に考えたものだ。
最初にまず、相撲のシコを踏むような姿勢……両足を横に大きく開き、腰をゆっくり落として膝を曲げる……を二人でし、次はあちらの世界の体育の時間でやったような腿あげ運動。両手を怪しげに動かして上半身をぐるんぐるんと回したかと思うと、子供の頃にやった相手と手をつないでやる「なーべなーべそーこぬけ♪」のような動き……
新婚の夫婦が初夜に寝台の前でやるようなことではない。絶対孔明は、これをやっている子龍と花を想像して今頃腹を抱えて大笑いしているに違いない。
「ねえ、もうそろそろいいんじゃないかな?」
花があまりにもばからしい自分たちの様子に耐え切れず子龍にそう言うと、子龍は真面目な顔で首を横に振った。
「だめです。孔明殿が親切にも教えてくださったのです。これであなたの痛みが少しでも取れるのなら、私は恥しいとは思いません」

あ、やっぱり子龍君も恥ずかしいって思ってたんだ……

花はそう思いながらも、子龍の指示に従って今度は手を子龍の肩に置き、揉むような仕草をする。子龍は続けた。
「私は孔明殿のことを誤解していました。これまでは、軍師という責務に置いては優秀な方ですが、不謹慎なことや人のうわさになる様な事を平気でなさる少々不真面目な方だと思っていました。けれども今夜私の相談に、とても優しく真剣に、親切にお答えしてくださったのです。これまで私は、その……正直に言うとあなたと孔明殿との仲の良さに嫉妬して、そのせいであの方への見方がゆがんでしまっていたのだと思います」
月明かりの下で孔明は、実際自分でその動きをしながら子龍にこの『体操』を教えてくれたらしい。

子龍君……。多分最初に思っていた師匠の方が本当の師匠に近いよ。今日のこれは、絶対師匠楽しんでるよ。あの人はすごく真面目にふざけたことをするんだから……

しかし孔明の優しさに感動している子龍にはそれは言えない。
花は仕方なく言われるままに奇妙なポージングを続ける。
「次はこのようにして……」
子龍に言われたポーズは、立っている花を後ろから子龍が抱きしめるような体勢だった。花は背中に子龍の引き締まった体を感じてドキンとする。
「そして花殿、あなたの腕を私の首に……」
子龍の首に手をまわそうと花が後ろを見ると、頬が触れ合うのではないかと思う位の至近距離に子龍の顔があった。
「…!」
花が思わず目を見開く。

子龍は花の匂いを感じて、彼女の目を覗き込んだ。
緊張したような期待するような潤んだ瞳。紅潮した頬。
髪を完全にあげている彼女は初めて見たが、とても大人っぽくて……。
細く白いうなじがまぶしい。何とも表現できないようないい匂い……暖かく柔らかい彼女の匂いが子龍を包む。
彼女の腰にまわしていた子龍の腕に、ぐっと力が入った。思わず引寄せてしまい、二人の体がびったりとあわさる。
「あ……」
小さく呟いた花の声がきっかけだったかのように、子龍はゆっくりとその柔らかそうなピンク色の唇に自分の唇を寄せていった。
そして彼女の唇を塞ぐ直前に、かろうじて子龍は真白になった頭の中から玄徳から言われた『痛みを取る方策』を思い出し、実行した。

「……痛い思いをさせてしまいますが、その何倍も気持ちいい思いもさせてさしあげることをお約束します」

 

 

 

<おまけ>

「あ〜あ、今頃いちゃいちゃしてるんだろうなあ、あの二人!」
翼徳が頭の後ろで手を組んで、どたりと後ろに倒れこんだ。孔明がにやにやしながら言う。
「いやあ、どうかな。僕の言ったことを真面目にやってれば、まだイチャイチャしてないと思うけどね」
「何か言われたのですか?花に?」
玄徳が杯を空けながら孔明にそう聞くと、孔明は首を横に振った。
「いえ、彼女にではなく子龍殿に」
孔明が事情を話すと、雲長が言う。
「孔明殿にも子龍は聞いていたのですね」
孔明が子龍との会話を思い出し、雲長に聞いた。
「そう言えば皆さんにも同じことを聞いたと子龍殿は言ってましたね。雲長殿はどのような『痛みを取る方策』を?」
「飲み物です。生姜や酒など一般的に痛みを和らげるものを教えました」
翼徳がうなずく。
「雲長兄いは料理が得意だからな。そういうのもよく知ってるんだよな。俺はね、ぜーんぜんわかない!だから仏様にお祈りするぐらいしかわかんないやごめん、って言ったよ。玄徳兄いは何を言ったんだ?」
玄徳は今度は孔明の杯を酒で満たしながら答えた。
「俺か?俺は…まあ痛いのはしょうがないことだからな。そのかわりにそれ以上の快楽を…ってなあ」
孔明は酒を噴き出した。
「い、意外に……エロおやじくさいことをおっしゃるんですね、我が殿は」
雲長も微妙な顔をしている。
「正直、玄徳兄いが言うとは思えないセリフかと……」
翼徳も言った。
「うーん……兄いが言うとなんていうか…すごいスケベに聞こえる…」
玄徳は慌てたように答えた。
「そうか!?まずかったかな?だが、この中で一番ひどいのは孔明殿の方策だろう?あまり若い二人をからかわれるものではない」
「いやいやいや、体を動かすことで緊張もとけ、仲良くもなる、という深慮遠謀なのですよ」
自分の口からしゃあしゃあという孔明に、皆の笑いが弾けたのだった。







おしまい