【薄桜学園スポーツデイ! 1】 
総司高校三年生、千鶴高校二年生の五月です。二人はつきあっています。アホアホ話です。「青は藍より……」の延長線上のいつかの設定です。
作者は各種スポーツについてほぼ未経験者です。あまり深くこだわらずフィクションとしてお楽しみください。

!!!ATTENTION!!! 沖田さんのキャラが崩壊気味です。なんでもこい!の方のみお読みください。














 「それではただ今より、薄桜学園スポーツデイを開催します!」
学園長のよくとおる声が5月の青空に響き渡ると、校庭に集まった生徒たちの間から、わぁっという歓声があがった。それととも各スポーツ担当教師らの伝達事項をつたえる声がスピーカーから一斉に流れ出す。
『バスケットボール第一試合に出場する2−Bの1グループと3−Cの2グループは至急体育館入り口に集合しろ!』
『バレーボール第一試合は9時半から同時に二試合行います。該当するチームは15分前までに各自色ハチマキをして運動場花壇前に集合してください。』
『ソフトボール第一試合をただ今から始めます。審判の生徒は至急運動場の野球用スペースまで来てください。』
途端に生徒たちのはしゃいだ声や試合前の掛け声が、薄桜学園全体に満ちてにぎやかになった。

 今日は年に一度薄桜学園のスポーツデイの日である。
各クラス男女混合のバレーボール2チーム、同じく男女混合のソフトボール2チーム、男子のみのバスケットボール2チームにわけ、学年関係なしのリーグ戦を行うのだ。クラス対抗のためクラス替えしたばかりのクラスの団結が深まるし、スポーツを通じて新しいクラスにもはやくなじめるようになるし、ということで毎年5月のGW開け頃に開催される。丸一日授業もなく自分の試合がないときはクラスの応援をしたり友達としゃべったり……、さらにはどのクラスの試合でも観戦できるため人気のある生徒の試合には全然関係のないクラスの生徒たちも集まり大いに盛り上がる人気の行事であった。

 当然有名人の剣道部のあの方々の人気もたいへんなもので、試合が始まる前から1年から3年まで女子生徒がむらがっていた。
「と、藤堂先輩バスケ、がんばってくださいね!」
「おー、俺次の試合だから応援してくれよな!」
「私も応援行くね!」
「おぅ!サンキュ!」
ピンクのハチマキを首でゆるく結んで、3−Eバスケットボール1グループの平助は女子生徒たちに囲まれている。

「斎藤先輩!バレーボールなんですか?」
「……そうだが」
「前にやってらしたんですか?」
「いや、体育でやった程度だ」
「斎藤君、運動神経いいから上手そう〜」
「普通だ」
3−Eバレーボール1グループの一はピンクのハチマキを、真面目に額に巻こうとするが、後ろ側が結べず苦戦していた。そのハチマキをとりあげ、さっと結んでやる手があった。
一と同じチームの総司である。
「一君は器用なのに変なとこで不器用だよね〜」
そういう総司のピンクのハチマキは、湯上りの手ぬぐいのように肩にだらっとかけてあるだけだった。

「おっ沖田先輩っ。あの、一緒に写メ撮ってもらえませんか?」
真っ赤になりながら一年生らしき女生徒が友達と一緒に総司に声をかけた。
「写真?僕の?」
「は、はい。一緒に……」
「僕なんかでいいの?」
総司が悪戯っぽい笑顔で見ると、その女子生徒は真っ赤になって固まった。
「は、はい…!あのっ剣道全国大会で……おめでとうございます……!先輩のこと、じ、自慢したくて……!」
固まったまま必死で言う女生徒の手から、総司は携帯電話をスルリと取り上げた。インカメラになっているのを確認すると、総司は真っ赤になったままの女生徒の肩を抱き、手を伸ばして構えると、はい、チーズ、と言って一緒に写真を撮ってやる。
「はい」
そう言って総司から携帯を返された少女は、真っ赤になったまま茫然と立ちすくんでいた。
女生徒をそのままにして一と歩き出した総司は、視線を感じてふと横を見る。

  少し離れた場所から千鶴が総司を見ていた。
「千鶴ちゃん♪」
途端に尻尾を振って総司か千鶴にかけよる。
「あれ?そんな顔してるのはなんで?」
にやにやと嬉しそうに千鶴の顔を覗き込む。千鶴は頬を赤くしながらふいっと横を向いた。
そんな彼女の顔を追いかけて、さらに覗き込むようにして総司は重ねる。
「ねぇ、なんで?」
「……別にどんな顔もしてません」
千鶴の言葉に、総司は楽しそうに続けた。
「僕も写真なんて別に撮りたくなかったんだけどね。剣道を広めるためにはサービスしなきゃな、って思って仕方なくさ」
「あー、そうなんですか。大変でしたね」
千鶴が淡々と返す。
「千鶴ちゃん……やきもち?」
総司は心底嬉しそうに言うや否や、いきなりがばっと千鶴を抱きしめた。千鶴は驚いて必死に抜け出そうと抵抗する。
「あ〜!!!もう!千鶴ちゃんかわいすぎ!大好き大好き大好き!可愛い可愛い可愛い!!!」
夢中になって千鶴の頭に頬をすりすりさせている総司の後頭部を、一が『ゴッ!』と鈍い音とともにげんこつでなぐった。
「時と場所を考えて発情しろ。いくぞ!」

総司を引きづりながら、一は千鶴に聞いた。
「千鶴もバレーか?」
「は、はい。斎藤先輩と沖田先輩もバレーなんですよね?」
「そうだ、あたるかもしれないな」
「平助君はバスケよね」
「うん。次の試合。応援来いよ」
平助がにかっと笑って言う。
「うん!絶対行くよ!ミニバスやってたから、平助君バスケット上手だもんね〜!!!」
千鶴が両手を顎の下でぎゅっと握り合わせて、目をキラキラさせて言うと、総司がぼそっと言った。

「……僕の応援はしてくれないんだ……」
その黒いオーラをまとった言葉に、三人ははっとする。
「あ……!もちろん沖田先輩は一番に応援します!バ、バレーやってらしたんですか?」
「……やってない」
総司の言葉に、平助はとりなすように慌てて言った。
「で、でもほら、体育の時になんか盛り上がってすげー練習してたよな。スパイクとかさ。一君と連携プレーとかやってたじゃん!」
千鶴も慌てたように調子を合わせる。
「そうなの?沖田先輩、運動神経いいからきっとバレーも上手そう!」
「……本当はバスケがよかったんだけどね」
少し機嫌が直ったようで、総司が答える。
「うちのクラスにはバスケ部員が二人もいたから俺たちはバレーにまわされた」
一の言葉に平助が続ける。
「うちのクラス、バスケ優勝目指してっから!」
「一君ちの裏の駐車場の横に、バスケットゴールがあってさ、そこでよく去年は三人で近所の奴らと試合してたから、絶対僕たちの方がバスケ部よりうまいと思うんだけどね。ま、別にバレーでもいいけどさ、僕運動神経いいから」
すっかり機嫌がなおったような総司に、千鶴と平助は顔を見合わせてほっとしたように微笑みあったのだった。


 「雪村!大丈夫か?」
流れたレシーブを必死に追いかけてつなげた千鶴が転びそうになるのを、同じクラスのバレー部の男子生徒が体をはってかばってやる。バランスを崩した二人はそのままもつれるように校庭に転んでしまった。最後の最後で千鶴の下になって衝撃を吸収してやった男子生徒は、自分の上に転がった千鶴に声をかけた。
「う、うん。ありがとう。ボールは?」
千鶴がつないだボールはなんとか相手コートにかえり、油断していた相手チームは受け損ねてしまっていた。
「あ、すりむいてんじゃないか?」
男子生徒が千鶴の腕をつかみもちあげると、手の甲に小さな擦り傷がある。
「大丈夫、これくらい。かばってくれたから……ありがとう」
にっこり笑って、千鶴はかばってくれた男子生徒を見上げた。


……ゴゴゴゴゴゴ……。
一は自分の隣から発せられる真っ黒なオーラを、無表情のまま少し避けて眺めた。総司の顔はいまや真っ黒になり、表情はほとんどわからない。しかし唇だけが笑っておりそれがさらに不気味だった。
「……落ち着け。千鶴がクラスメイトと仲良くすることはいいことだろう」
「……別に落ち着いてるよ。全然平常心」
総司は答える。自分の試合が終わった平助も(もちろん勝利で)総司の隣でつぶやいた。
「……よけー怖いんだけど」

一方バレーボールコートの中の千鶴は、乗っかっていた男子生徒の体からあわてて降りるところだった。
「ご、ごめんね。ありがとう。重かったでしょ」
男子生徒はスポーツ選手らしくにっこり爽やかに笑った。そして少し頬を赤らめて言う。
「全然。それに雪村なら大歓迎だよ」
「えっ……////」

「……あいつ死んだな……」
もう既に黒いオーラではなく、どす黒い煙をもくもくと発している隣の総司を見ながら平助はつぶやいた。
「行くぞ。そろそろ出番だ。俺たちが次の試合に勝てば、その次は千鶴のクラスのもう一方のバレーチームとあたるな」
一の言葉に総司の瞳がキラリと光った。
「確かチームのメンバーって交代自由なんだったよね?」
「ああ、自分の試合と重なってさえなければ掛け持ちは自由だ」
「……よし」
何か黒いことをたくらんでいるような総司を、一と平助はあきらめ顔で眺めた。


 自分のチームが勝ち、しばらくはクラスの試合がない千鶴達は女友達と連れ立って総司達3−Eバレーボール1グループの試合を見に行った。近づくにつれ一方のコートの脇に女子生徒たちが群がり黄色い声が響いているのが聞こえてくる。
「っきゃーー!斎藤先輩バックトス〜!!」
「すごい〜!!かっこいい〜!!」
「きゃーーー!沖田先輩スパイク!!」
「「きゃああああああっ」」
悲鳴のようなすごい声に驚きながら、女生徒たちの人ごみをかき分けてそっとコートを覗くと、総司達のチームが圧倒的な強さでリードしていた。
相手チームからのサーブを総司のチームの後衛が受け、レシーブをあげる。そのボールを、今度は総司がきれいなフォームでトスをあげた。コートの反対側にいた一が、待っていたかのように後ろから助走をつけて思いっきりジャンプをして相手コートにドライブのかかったスパイクを叩き込む。相手チームは全く反応できないまま、また総司達チームの得点になった。
「すごいすごい!斎藤先輩高〜い!!」
「すごいジャンプ力だよね!」
「沖田先輩のトスもきれいだったよね!」
「すごいかっこいい〜!!!」
きゃあきゃあ騒いでる女子生徒に圧倒されながら、千鶴も二人の恰好良さにぼうっとなって試合を見つめる。我知らず両手を顎の下で握り締め、祈るようなポーズになってしまう。
次は総司のサーブだった。余裕のあるフォームで軽く打ったサーブはきれいな放物線を描いて相手チームに入った。相手チームはスパイクを打てないようで、そのまま総司達にボールが帰ってくる。レシーブしたボールが自分のところに来た一は、ちらっと相手チームの立ち位置を確認してちょうど誰もいないスペースにツーアタックで返す。またもや相手チームは全く反応できないまま、総司達チームの得点となり、試合は総司と一のチームの圧倒的有利のまま終了した。


 「千鶴ちゃん、見てたの?」
「はい、おめでとうございます」
にっこり笑ってくれる千鶴に、総司はご満悦だった。
今日の千鶴の髪型はお団子で、クラスのハチマキの色は明るいブルー。そのハチマキでお団子の周りをリボンのようにぐるっと巻いて結んでいる。細くて白いうなじがむき出しでまぶしい。脚は残念ながら短パンではなく長いジャージだったが、ほかの男が千鶴の脚を見ることがなくて安心でもある。

そのまま女子生徒たちの熱い視線の中、総司と一が千鶴の方へと歩いていくと、周りの女子生徒たちがひそひそと会話を交わす。

「誰、あれ?」
「彼女だって」
「え?誰の?」
「沖田先輩」
「ええっ!?まだあの人とつきあってるの?」

そんな囁き声が聞こえてきて千鶴は居心地が悪かった。一が気が付いて、あちらに移動するか、と言って二人を促す。千鶴はほっとしながら運動場の隅の人があまりいない方へと歩き出した。
「次は千鶴のクラスとだな」
一の言葉に千鶴はうなずいた。手を握りこぶしにして前に差し出す。
「負けませんよ」
「千鶴ちゃんとは違うチームでしょ?」
「はい、でも応援頑張ります」
千鶴の気合いの入った言葉に、総司はうっすら笑いながら言った。
「ふーん……。まあせいぜい頑張って。それよりさっき試合中に転んでたでしょ。怪我しなかった?」
総司が千鶴の手をとる。
「あ、大丈夫です。大した怪我じゃ……」
千鶴の言葉は途中で途切れた。総司が持ち上げた千鶴の手の甲、怪我の部分をぺろっと舐めたのだ。
「おっおっおお沖田先輩……!!」
真っ赤になった千鶴に、総司はちらり、と目をやってにやっと笑った。
「消毒」
総司の思考回路がわかっている一は、やっぱり、と思いながら溜息をついたのだった。






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