図書館妄想
「ねぇ……三階に行こうよ」
総司はそう言うと、隣に座ってシャープペンシルを動かしている千鶴の手に自分の手をそっと重ねた。
千鶴は、参考書におとしていた視線をあげ、総司へ向ける。手を握られて、少し頬を赤くして。
「三階って……なにがあるんですか?」
「ここの図書館の三階はね〜。つまんない分厚い辞書とか、地域の歴史の本とか……かな?」
総司の言葉に千鶴は首をかしげた。
「辞書……?」
「そう、つまんないから、……誰も来ない」
最後の一言は甘く甘〜く囁く。
さすがの千鶴も意味が分かったのかパッと顔を赤くした。
「約束、したでしょ?僕の誕生日プレゼント、何が欲しいか僕が言ったの覚えてる?」
「……」
千鶴はさらに顔を赤くして俯く。総司は目をそらしてしまった千鶴の顔を覗き込み、さらに聞く。
「忘れちゃった?」
「お……覚えてます……」
「三階でそれ、やらせてよ」
「……」
無言で赤くなったまま俯いてしまった千鶴の手を、総司は優しく引っ張り立ち上がった。
「ほら」
促すと、千鶴もおずおずと立ち上がる。
☆つづく☆