■土方さん
「あ〜あ……」
千鶴は一人でダイニングテーブルに座り、ケーキを一口食べた。
今日は千鶴の誕生日。土方とちょっとしたごちそうを食べてケーキでも……と思って作っていたのだが、彼は急な出張で出かけてしまった。
仕事なら仕方ないけど……。でも多分私の誕生日ってことも忘れてるんだろうなぁ……。
仕事に打ち込む土方のことを、千鶴は好きだった。能力も、人を魅了するカリスマも、誠実さも、熱さもある。忙しくなるのは当然だと思うけれど……。誕生日に一人ぼっちの新婚の妻としては、少しさみしい。
その時携帯がなった。多分土方からだろう。千鶴は通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『おお、悪かったな。急に出張で。』
「いいえ、大丈夫です。そっちは雨ですか?」
そこから他愛もない話をしばらくして、そろそろ電話を切ろうかと、じゃあ……と千鶴が言った時、土方がゴホンと咳払いをした。
『あ〜……おまえ今日電子レンジ使ったか?』
「え?いいえ?」
『そうか……。ちょっと見てみろ。』
何を言っているのかと不思議に思いながら、千鶴は携帯を持ちながら電子レンジにむかい、扉をあける。
中にはきれいに包装されてリボンがかけられた細長い箱が入っていた。
『……誕生日おめでとう。』
(照れ臭がりつつちゃんとやってくれそう。プレゼントは光物のブルガリとかティファニーとかはずさない無難なところで。)
■沖田さん
待ち合わせの時間になっても、総司は来なかった。
仕事が長引いているのかな……。
千鶴は待ち合わせ場所の、大きな電光掲示板の前で冷える指先に息をふきかける。
今日は千鶴の誕生日で、総司がお祝いに食事にでも行こうと誘ってくれたのだ。千鶴はおしゃれをして総司を待っていた。その時突然後ろの電光掲示板がちかちかと点滅しだした。道を歩いている人や、千鶴のように待ち合わせをしている人達がそちら見る。千鶴も何事かと掲示板を見た。
『千鶴、誕生日おめでとう。こうして一緒に祝えることがとても幸せだよ。 総司』
流れ星のように背景のネオンが流れる中、総司からのメッセージが大きく映し出された。
千鶴は唖然とする。と、突然目隠しをされた。
「読んでくれた?」
声から、当然総司だとわかる。千鶴は嬉しいやら恥ずかしいやらで真っ赤になりながら、はい…、と答えた。総司は目隠しをしたまま続ける。
「メッセージには続きがあってさ……」
そういうと、総司は千鶴の耳元に口を寄せた。
「……愛してる」
目を塞がれていた手が外れ、千鶴はゆっくりと後ろを振り向いた。総司は優しく微笑みながら千鶴を見ていた。
朝家を出て行った時と同じ、黒いコートにスーツ姿。外で見ると……、妙にドキドキしてしまう。そんな千鶴に総司はそっと小さな箱を差し出した。
「前に見てたでしょ。真珠のピアス」
確かに見ていたが、結婚する前、まだつきあっていたころだ。そんなことを覚えていてくれたのかと千鶴は嬉しくて思わず涙ぐんでしまった。
「それと……これ」
そう言って沖田が差し出したのは、四葉のクローバーだった。
「ビルの前の植え込みに生えてたんだよ。たまたま見つけて」
千鶴の眼から、ぼろりと涙が一粒こぼれる。
「君にたくさんの幸運がありますように」
(恥ずかしげもなく怒涛のようにこういう演出をやりそう。)
■斎藤さん
土曜日の夕方、キッチンからはいい匂いがただよっていた。
それにつられるように、千鶴はキッチンを覗く。
ガスレンジの前では、斎藤が黒いシャツの腕まくりをしてビーフシチューの味見をしている所だった。横目でちらりと千鶴を見つけると、斎藤はにっこりと笑い手招きをする。
「ちょうどいいところに来たな。味見をしてくれ」
今日は千鶴の誕生日。夕飯は斎藤が腕によりをかけて作ってくれることになっており、そのために彼は昼からずっとキッチンにこもりっぱなしだった。
「せっかくの誕生日なのに、放っておいて悪かった」
斎藤がすまなそうに微笑むと、実はかまってほしくてキッチンの周りをうろうろしていた千鶴は、顔を赤くした。
「もう出来上がりだ。ちょっとこっちに来てくれるか」
そう言って斎藤は先に立ってリビングへと歩き出した。
リビングの奥、大きな収納の扉をあけると、そこには小さな可愛い花束とプレゼントの紙包みが隠してあった。
「……これ……?」
てっきり夕飯がプレゼントだと思っていた千鶴はびっくりした。ここは確かにあまり開けない収納だが、こんなところに隠していたとは……。
斎藤は目じりをうっすらと赤らめながらもピンクのバラとカスミソウがブーケのようになっている小さな花束を千鶴に渡した。
「誕生日、おめでとう」
まっすぐに言われて、千鶴も思わず赤くなる。
「あ、ありがとうございます……」
「いつもいろいろとしてくれていることにとても感謝している。ありがとう」
さらに顔を赤くしながら、斎藤は言葉と共にプレゼントを渡した。千鶴が開けてみると、暖かそうなカシミヤのベビーピンクのショールに、同じく薄いピンクの柔らかなレッグウォーマーと手袋、そして白いフワフワのスリッパだった。
「手足が冷えると言っていたのでな……」
照れ臭そうに言う夫の頬にそっと顔を寄せて、千鶴はキスとともに心からの笑顔とお礼を告げた。
(心あるお祝いをしてくれそう。プレゼントは結構実用的な物をくれそうな……。)
■平助君
「誕生日おめでとう!!」
太陽のような晴れやかな笑顔ともに渡されたのは、重そうな3つの紙袋……。
千鶴はクエスチョンマークとともに受け取ろうと手をのばしたが、平助が、重いから、と言って自分でリビングのローテーブルの上に置いてくれた。
「何をくれたの?」
千鶴がわくわくしながら覗き込むと、そこにあったのは……。
「こち亀全巻!」
ドヤッと言わんばかりの平助とは対照的に、千鶴の目は点になる。
「前からさ〜、欲しいって言ってただろ。買おうかどうしようか迷ってたじゃん。だからプレゼントこれがいいかなって」
確かに迷っていた……。
迷っていたが……。新婚の夫からの誕生日プレゼントとしてはどうなのだろう……。
千鶴は微妙な表情をしながらも、ありがとう、とお礼を言った。持って帰って来るのは重かっただろう。
その後は二人で千鶴の作ったごちそうを食べて。
リビングで二人でこち亀を読み耽りながら、千鶴の誕生日の夜は更けていったのだった……。
(これはこれで楽しそう。)
■左之さん
一緒に夕飯を食べているときに、左之はふと思い出した、というように言った。
「あ、言ってなかったよな?俺明日休みとったぜ」
「え?明日ですか?」
お椀とお箸を持ったまま千鶴はキョトンとする。
「明日お前の誕生日だろ〜?なんだよ、自分でも忘れてたのか?」
呆れたように笑う左之に、千鶴は赤くなった。結婚式に引っ越し、新居のこまごまとしたこと、新婚旅行……、することが多くて本当に自分の誕生日を忘れていた。
けれどもちゃんと覚えていてくれた左之に、千鶴は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます……!嬉しい」
「ディズニーシーでも行くか?行きたがってただろ。平日だからすいてるぜ、きっと。そんでそのあとは……、新しくできたショッピングモールがあるだろ、あそこにでも行ってみるか。で、ちょっと洒落たメシでも食って……。洋服でもカバンでも指輪とかでもなんでもいいから、プレゼントも一緒に選ぼうぜ」
とんとんとデートコースを決める左之に、千鶴は、慣れてるなぁ…と思いつつもすべてやってみたかっったり行ってみたかったりしたかったことだったので、とても嬉しかった。しかもわざわざ休みまでとってくれて……。
「……一緒に丸一日過ごせるんですね……。それが一番のプレゼントです。ありがとうございます」
頬を染めて恥ずかしそうにかわいいことを言う新妻に、その後左之が何をしたのかは言うまでもない。
(こういうプラン作成はとても上手そう。プレゼントは一緒に買うのが一番の正解のような気がします。)
■皆様のお好みのお祝い隊士は誰ですか?RRAは……平助君か斎藤さん。うーん……迷う……。斎藤さんでしょうか……。勘弁してほしいのは沖田さん。
☆皆様のお好みのお祝い隊士☆
土方さん……3人
沖田さん……2人
斎藤さん……8人
平助君 ……2人
左之さん……8人
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