旦那様の会社帰りに待ち合わせて、今夜はデート。
ちょっぴりセクシーなワンピースも買っちゃいました♪
■土方さん
「どうですか?」
ふふっと笑いながら千鶴がくるりと回って見せるのを、土方は眉間に皺を寄せて見ていた。
オフショルダーでむき出しの肩、同色の透けているように見える膝丈の巻きスカート。スカートの合わせ目はゆるく、深いスリットのようにも見える。
すんなりした足は素足で、華奢なピンヒールのサンダルを履いていた。
色気過剰というわけではなく、だがしっとりとした女っぽさもあり、千鶴は我ながら大人っぽく装えたのではないかと満足していた。
土方も気に入ってくれるのでは……と、彼の顔を見た千鶴は、動きを止めた。
「あの……気に入らなかったですか?」
「……」
千鶴の後ろを通り過ぎていくサラリーマンたちの群れが、ことごとく千鶴を見ているのを、土方はイライラしながら見る。
「他の男に、自分の女がスケベな目で見られているのを喜ぶ男はいねぇだろ」
「ええ?」
思いもしなかった台詞に、千鶴はキョトンとした。
「だって前テレビで、『いい女を連れて歩くのは男も嬉しい』って一緒に見たじゃないですか」
「俺は違うんだよ。帰るぞ」
「だって今日はあのフレンチの店に行くって予約もしてるし楽しみに……」
「メシ食ってる間中いらいらしてんのはごめんだ。キャンセルすりゃあいいだろう」
千鶴の手首を掴んで帰ろうとする土方に、千鶴は足を踏ん張って抵抗した。
「嫌です!なら私一人で行ってきます」
「ああ?んなこと許すと思ってんのか」
「許すって……許すってなんですか?じゃあ一緒に行ってくれればいいじゃないですか!」
「そんな服着てきた時点でアウトっつーことだよ」
「歳三さんの横暴!我儘!自分勝手!せっかく買ったのに!大人っぽく見えるかと思って嬉しかったのに……!もうこんなワンピース捨てます!」
千鶴が怒って背中を向けて歩き出そうとすると、土方は再び彼女の手首を掴んでとめた。
「家で部屋着にすりゃあいいだろう、別に」
いくらしたと思ってるのか、今日初めて着てきたのにもう部屋着にだなんて……と抗議しようとした千鶴の声は、土方の次の台詞を聞いて止まった。
「……似合ってるんだからよ」
(独占欲…とういか自分のものに手を出されるのはものすごく嫌がりそうなイメージです)
■沖田さん
「どうですか?」
そう聞いた千鶴の言葉に総司からの返事はなく、じろじろと頭のてっぺんからつま先まで見られて、千鶴はだんだんと居心地が悪くなってきた。
「あの……似合ってないですか…?」
「ううん……っていうかさ、その谷間どうやったの?」
総司の視線の先は、千鶴の胸元に初めてできた谷間にあった。千鶴の頬が熱くなる。
「……」
からかわれたと感じて剥れた千鶴に、総司はにやにやと笑いながら言った。
「すごいね、科学の粋をあつめて作られた谷間ってわけだね」
「……」
「それにそんなに肩むきだしで……。あのレストラン空調寒いよ?文句言わないでね」
歩き出した瞬間つまづいた千鶴は、「あ〜あ、そんな高いヒールはいてくるから…」と総司に言われ、再び顔を赤くして俯いた。
おしゃれしたつもりだったけど……似会ってないのかな。やっぱりちょっと大人っぽすぎた?
だんだん気持ちが落ち込んできた千鶴は、うつむきながら歩きにくいサンダルで、必死に総司の後を追いかけて歩いていた。
……靴ずれしちゃった……。
痛いけど、総司さんにそんなこといったらまた何か言われそう……
ガマンしてひょこひょこと千鶴が歩いていると、総司が溜息をついて立ち止まった。
「ほら、あそこ。薬局あるし向かいにベンチがあるから」
予約の時間に遅れると総司が携帯から店に電話している間、千鶴はみじめな気分で絆創膏の包み紙を剥いていた。電話を終えた総司が、「ほら」といって自分のジャケットを脱いで千鶴のむき出しの脚にかけてくれる。そして千鶴の一方の脚を持ち上げて自分の膝に乗せ、絆創膏を貼りだした。
「あ、あの…!いいです、そんな…自分で……!」
慌てて止めようとした千鶴の顔を、総司の笑みを含んだ緑の瞳が覗き込んだ。
「……僕に見せたくて、がんばっておしゃれをしてきたの?」
「……」
「かわいいね」
(ツンデレめっ(^o^)/)
■斎藤さん
「どうですか?」
無表情のままの斎藤をのぞきこんで、千鶴は聞いた。
「うむ……赤色だな」
「……」
たしかに赤色のワンピースだが、別にそれを聞きたかったわけではない。しかし斎藤の感想がそれしかないというのならそれ以上聞けず、千鶴は黙り込んだ。
何も言わずに前を向いて隣を歩き出した斎藤の顔を、千鶴は下から不安げに見上げる。
……気に入らなかったのかな……。
この前の飲み会のお金を、一さんのお小遣いから出してもらって節約しているのに、こんなワンピースを買っちゃったから無駄遣いだって怒ってるのかな?
一生懸命目を合わそうと斎藤を覗き込むのに、視線を合わせてくれない彼に、千鶴は手を繋ごうと自分の手を伸ばし触れる。
その瞬間隣の斎藤が、ズザザザザッと音がでるくらい飛びずさったのを見て、千鶴はきょとんと立ち止まり斎藤を見た。彼の顔はみるみるに赤くなっていく。
「……一さん?」
「い、いや……」
斎藤はまだ目をあわせられないようで、視線を千鶴から外し真っ赤な顔のまま口ごもった。
「……別の人のようでな……」
「え?」
「うむ、少々……照れ臭いと言うか……」
千鶴はほっと笑顔になり、再び手をのばす。
今度は振り払われることなく、受け入れられたのだった。
(照れてるのと人見知りと)
■平助君
「平助君、こっち!」
待ち合わせの喫茶店に、遅れて入ってきた平助に、千鶴は手を上げて合図をした。
「わりっ遅くなっちまっ……て……」
座っている千鶴の姿を見てセリフが尻すぼみになった平助に、千鶴は恥しそうに微笑んだ。
「どうかな?新しいワンピースなんだけど…」
平助はカバンをおいて、とりあえず向かい側に座りながらぼそぼそと返事をした。
「ああ……うん……」
「似合わない?」
「いや、別に……」
むやみやたらに手を動かし、挙動不審な平助の顔を千鶴は覗き込んだ。平助は驚いたようにのけぞり、その拍子に机の上にあったティースプーンが音を立てて床に落ちる。
「あ、わりい」
そう言って体をかがめテーブルの下を覗き込んだ平助は、一瞬動きを止めた。
そして妙な顔をして体を起こし、驚いたように目を見開いたまま千鶴に顔を寄せてナイショ話のように言う。
「ス、スカート…なんか切れてんぞ」
「あ、これは巻スカートで、座ると合わせ目のところがたるんでスリットみたいになっちゃて……」
千鶴が答えると、今度は平助はまじまじと千鶴の顔を見て、また言う。
「目、目の上、なんかキラキラしてる……」
「これは別に…普通のアイシャドウだけど、キラキラする成分がはいってるんだよ」
「そ、そうなっ……!」
返事を仕掛けた平助の言葉は、千鶴の胸元を凝視して止まった。
谷間ができてるって絶対思ってる……
がんばっておしゃれして、ことごとく反応してくれるのは嬉しいけれど、何かどうも違うような……と千鶴は首をかしげたのだった。
(色っぽすぎてキョドってるという…^_^;)
■左之さん
「どうですか?」
どきどきしながら聞いた千鶴に、左之は満足そうにこげ茶色の透明な瞳をきらめかせた。
「いいんじゃねぇか?千鶴のそういうかっこ、初めて見るな。色っぽいけど下品じゃねえし、似合ってるよ」
千鶴は褒められた嬉しさで、頬を赤く染めた。左之も嬉しそうで、ほわほわしたムードが二人を包む。
緩んだネクタイを締めなおしながら、左之が言った。
「じゃ、そろそろ行くか?」
そう言って差し出してくれた腕に、千鶴はそっと手をかける。歩きにくい靴であることを分かってくれているのか、左之は今日会社であった面白い話をしながらもゆっくりと歩いてくれた。
予約していたフレンチレストランにつくと、ドアを開けようとした千鶴を制して左之が開けてくれる。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
いつも優しいが、あからさまにお姫さまのように扱われて千鶴は再び頬を染めた。
オーダーをし終わったウエイターに、左之が何事が囁くと、彼は承知したというようににっこりとほほ笑んでうなずいた。
何かと千鶴が思っていると、少し寒いと感じた空調が緩められたのを感じる。
ダウンライトの灯りの下、二人でワインで乾杯をして、楽しい夜は更けていくのだった。
(キザなことも平気でできそう)
皆様のお好みの「ちょっと色っぽくおしゃれしてフレンチし隊士」は誰ですか?
RRAは左之さんでーーーーす!ふつーに褒めてくれたら嬉しいです。
☆皆様のお好みの慰め隊士☆
土方さん……2人
沖田さん……6人
斎藤さん……0人
平助君 ……1人
左之さん……5人
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