太陽が沈み、だんだんと暗くなってきた。朝の天気予報がはずれ、空は今にも雨が降り出しそうに重く垂れこめている。
休日夕方の小さな駅のタクシー乗り場は、街へ出かけて帰ってきた若い女性たちが急な雨の気配に、長い長い列を作ってタクシーを待っていた。
しかしこんな小さな駅。いつもはほとんどタクシーの需要がないため、タクシーは来ても20分に一台、というペースで、待ちきれない女性たちはそれぞれ家へ電話をして迎えに来てくれるよう頼む。

クラクションの音がして、千鶴の4人前にタクシー待ちの列に並んでいた女性が列から外れて迎えの車の方へ歩き出した。
長い長い列に並んでいる女性たちみんなが、見るとはなしに迎えに来てくれた男性と車を見る。
(ふ〜ん……、国産の普通車か……。)
(まだ若いしね、まぁいんじゃないの。)
(相手の男も、普通って感じ……)
沈黙のなかに、女性たちの感想が立ち込める。
そんな中……






■土方さん


重低音のエンジン音を響かせて、一台の黒い車がロータリーに入ってきた。
(ベンツ!?)
(しかもスポーツタイプ!?)
女性たちが一斉に、列を外れた千鶴を見た。千鶴はそんな視線には気づかずに、迎えに来てくれた土方の車に嬉しそうに駆け寄る。
(あの子、まだ若くて大人しそうなのに……。どんなオヤジとつきあってるのよ!?)
(援交?まさかねぇ?)
(絶対運転してるのはスケベ親父に……)
そんな無言の視線の中、車から降り立ったのは……。

それほど上背はないが、均整のとれた体。真っ黒なさらさらした髪。整った顔立ちにもかかわらず、意思の強いカリスマ性を感じさせる。
千鶴を見た時の笑顔が驚くほど華やかで、彼女を甘やかすわけではないが、荷物を持ち車に積んでやる優しさはある。
『色男』という形容がぴったりくる土方に、女性たちは見惚れるしかないのだった。


(金+権力+ヤンチャ+おしゃれな車を選びそう。)







■沖田さん


ブォンブォン!というエンジンの排気音とともに、一台のバイクが駅前のロータリーに走りこんできた。
手にはもう一つメットを持っているから、このタクシー待ちの列の誰かのお迎えだろう。
バイクを停めて、またがったままヘルメットをとった彼に、女性たちは息をのんだ。

(ちょっ…!かっこいいんですけど…!)
(背も高いし、ガタイもいいし……!バイクの後ろに私も乗せて〜!!)
茶色のサラサラの髪に大きめのアーモンド形の瞳。少し冷たそうな唇がさらに近寄りがたい魅力を加えている。人を探すように辺りを見渡した彼は、千鶴を見つけてにっこりとほほ笑むと彼女に歩み寄った。その、甘やかすような、甘えるような瞳の色に、見ている女性たちは何故か赤くなる。
何故だか尻込みをしている彼女に、いーからいーから、大丈夫!と言い、彼は強引に荷物をうけとり、彼女にヘルメットをかぶせてバイクの後ろに乗せる。
「あっ安全運転してくださいよ……!」
彼女のあせったような声に、彼はへーきへーき!と朗らかに笑い、エンジンを大きく拭かした。
「しっかりつかまっててよ!20秒で家まで帰れるか、今日は記録にちょーせーん!!」
愉快そうな彼の声に、かぶさるように聞こえてくる彼女の悲鳴。あっという間に遠くなっていくバイク音を聞きながら、女性たちは、やっぱり普通でいいや……、と思い直した。


(スピード狂のイメージが……。ああ、またもや沖田さんがこんな扱いに……orz。)






■斎藤さん


車が来たとは思えないくらい静かに、そのブルーの車は駅前のロータリーに入ってきた。
(エンジン音が全然しない?)
(あれって……、プリウス?エコカーよね?)
駆け寄る彼女と、中から降りてきた男性も、車のイメージにびったりの清潔感のある好感のもてるカップルだった。
少し長めの髪は彼の静かなたたずまいにあっているし、無表情ながらも彼女の顔を見たときにうっすらと目じりを染めて嬉しそうにしているところが、母性本能をくすぐられる。
一方彼女の方も、近頃珍しい黒いままのさらさらの髪に、薄紫のカットソーと白い膝丈のフレアスカートという可愛らしい姿で、頬をそめながら彼を見上げている。
彼女が、多分街で買ってきたケーキらしきお土産を持ち上げて彼に説明し、彼はそれを、幸せそうにうなずきながら聞いていた。

「そうか。久しぶりに友達に会えてよかったな。夕飯はつくってあるから早く帰ろう」
漏れ聞こえてくる彼の台詞に、女性たちの好感度はさらにアップする。
まわりの女性たちは、キュンキュンしながらかわいらしいカップルを見送ったのだった。


(またなんか斎藤さんを無害でおかんな感じにしてしまいました……。なんとなくあまり車とかに興味を持たないようなイメージがあって……。)








■平助君


チリンチリーン♪というベルの音に、まわりの女性たちが振り向いた。
先ほどから、アルファードにマツダのMPV、Jeep、と値段もガタイも張る大型車が続いたため、今度はいったいどんな車が……!という期待が、タクシー待ちの女性達の中でうずまいていた。
そんなかやってきたのは……。

自転車に乗った平助。
「平助君!」
千鶴が嬉しそうに駆け寄る。
「自転車で迎えに来てくれたの?ありがとう!」
千鶴が、荷台に横座りするのを待って、平助は自転車を再びこぎ出す。
「悪ーなー、車なくて。そろそろ買おっか?」
頭を掻きながら苦笑いしている平助を、千鶴は後ろから覗き込んだ。
「うーん……、車になっちゃうと……」
千鶴はそう言いながら、前の平助の体に腕を回し、ぎゅっと抱きつく。
「こういうこと、できなくなっちゃうから、……このままがいいな」

平助が肩越しに後ろを見ると、顔を真っ赤にして千鶴が自分の背中に頬を寄せている。
へへっ、と何故かこぼれるにやけた笑いをごまかして、平助は咳払いをした。

「帰りさ、あそこ寄ってこーぜ!あのお好み焼き屋!」
「うん!嬉しいなー。私今日はネギ焼きにしよっと」
「俺は特大ミックスモダン!!」
「あそこの店長さん、平助君と仲良しだからいっつもいろいろつけてくれるよね」
「なんか仲良くなっちまったんだよな〜」
不思議そうに首をかしげている彼を、千鶴は後ろから微笑みながら見上げる。

きっと、平助君だからだよ。
平助君の魔法にかかると、みんな笑顔になって、平助君を好きになっちゃうんだよ、きっと。
私みたいに。

心の中でそっと呟きながら、千鶴は再び平助の暖かい背中に頬をよせたのだった。


(ちょっと贔屓しすぎましたか……?RRAの持ってる平助君のイメージってこんなです。)







■左之さん


深いワインレッドのスポーツカーが、滑るように駅前のロータリーに走りこんできた。
低い車高、流線型のボディにまばゆいライト……。車には妙な形容詞だが、色っぽい、という言葉がぴったりの車だった。

(たいていああいうのに乗ってるのって、車オタクがバカっぽいヤンキーなのよねぇ……)
(車負け……って言葉、あるのかしら……?)
女性たちの皮肉っぽい視線の中、運転席から颯爽と降りてきたのは、驚くほど車のイメージぴったりの左之だった。
派手な車に特に気負った風でもなく、薄い色のチノパンにポロシャツというラフな格好で、左之は千鶴に、よっ、と手をあげ合図する。

女性たちは言葉もなく、つばをごくりと飲み込んだ。
(なにこれ?ドラマの撮影?)
(こんなに絵にかいたようなかっこいい一揃いがこの世にあるなんて……!)

女性たちが一斉に発する『ナンパして』オーラを無視して、左之は助手席のドアを開け千鶴を乗せてやると運転席に乗り込んで、走り去ったのだった。


(某MADに載っていた「休日に愛車を走らせる左之さん」のイメージがもう定着してしまっていて……。)







                         



■皆様のお好みのお迎え隊士は誰ですか?RRAは……もうお分かりかと思いますが、平助君です。


☆皆様のお好みのお迎え隊士☆
 土方さん……0人
 沖田さん……4人
 斎藤さん……5人
 平助君 ……5人
 左之さん……1人








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