今日、美容院に行ってきました♪
■土方さん
「どうですか?」
返ってきた土方を玄関で出迎えて、千鶴はまずそう聞いた。
土方は革靴を脱ぎながら千鶴を見る。
「…何がだ」
訝しげに眉間にしわを寄せている土方に、千鶴はちょっと膨れながら今日美容院に行ったことを告げる。土方は、さらに眉間のしわを深めて右から左から千鶴を実験動物のように観察し、言い放った。
「まったくかわんねぇな」
「ええ?」
千鶴は目を見開く。
「少し切って、レイヤーを入れたんです。軽くなってませんか?それと初めて色を明るくしてみたんです。ローライトと、ハイライトもいれて髪に動きをつけて、トリートメントをしてサラサラに…全部で4時間くらいかかったんですけど…」
土方はカバンを千鶴に渡してジャケットを脱ぎながらクローゼットのある寝室へ歩き出した。千鶴も後ろをついて行く。
「わかんねぇ。坊主にでもすりゃあさすがに気づくがな。これでわかれっつーのも無理な話だろ。時間と労力の無駄だな。おめーは目も真っ黒いし肌も白いし、髪は真っ黒のままの方が似合うんだよ。無駄なことしてねえでそのまんまでよかったのによ。…まぁきれいでいようとするその心意気は悪くは…」
ジャケットをハンガーにかけて振り返った土方は、後ろの千鶴が黒いオーラをモクモクと出しているのに気が付いて、後ずさった。
「おい、ちょっ…待て、悪かった。に、似合って…」
千鶴は無言のまま持っていた土方のカバンを押し付けると、くるりと後ろを向いて寝室を出ていき、トイレに立てこもったのだった。
(会社で部下に接するときモードのままで千鶴ちゃんに接して、千鶴ちゃんを怒らせたりしそう。言ってることが正しくても女性にはそのモードは駄目だと思います。)
■沖田さん
「お帰りなさい、総司さん」
嫌に機嫌よくにこにこと自分を見る千鶴に、総司はカバンを手渡しながら目を瞬いた。
「…ただいま。何?何かあった?」
「……」
千鶴は無言のまま頭をふり、髪をサラサラと揺らす。
「どうですか?いつもと何か違うところ、わかります?」
嬉しそうに悪戯っぽく、総司を試すように言う千鶴に、総司の緑色の瞳も楽しそうに煌めいた。総司は顎に指を当てて、腕を組んで千鶴を、頭のてっぺんからつま先までじっくり見る。
「う〜ん…、新しいスカート?違う?じゃあスリッパを新しいのをおろした、とか?これもハズレ?じゃあ…靴下?化粧?ピアス?…」
つぎつぎと的外れのことを言う総司に、千鶴は口をとがらせる。
「本当にわからないんですか?」
千鶴がちょっと怒ったように言うと、総司はにやっと笑って千鶴の肩をだき、いっしょにリビングに歩き出した。
「わかってるよ、ホントは」
総司の言葉に、千鶴は恥ずかしそうに微笑んだ…次の言葉を聞くまでは。
「…ニキビができたんでしょ?顎のとこ」
「違います!」
即答で冷たく答えて、肩の手をはずして怒ってキッチンに行くふりをした千鶴に、総司は笑いながら追いすがる。
「ウソウソ!ごめん!からかっただけ。ほんとはわかってるって…!」
総司の言葉に、千鶴は少し咎めるような、期待するような目で振り向いた。じゃあなんですか?という千鶴に総司は答える。
「…太ったんでしょ。すぐわかったよ」
「もういいです!早く着替えてきてください!」
プンと後ろを振り向いて、キッチンでガスコンロをひねった千鶴に、総司は、は〜い、と返事をする。そしてリビングから出ていき間際…
「あ、そうそう。似合ってるよ、新しい髪型」
屈んで火の調節をしていた千鶴は目を見開いた。頬を染め、部屋から出ていく総司の後姿を見つめながらつぶやく。
「……もうっ」
(沖田さんに振り回される千鶴ちゃん、バンザイ!沖田さんの本領発揮?)
■斎藤さん
「今日、美容院に行ってきたんです」
千鶴の言葉に、斎藤は振り向いた。
「…そう言えば…どこが、とはわからないが雰囲気が違うような気がするな」
ネクタイの結び目を解きながら斎藤はそう言った。千鶴はジャケットをハンガーに掛けながら続ける。
「軽くしたいなって思って、ちょっと色を明るくしたのと、レイヤーをいれたんです」
斎藤は千鶴の言葉に一瞬固まった。
「レイヤー…『層』のことか?物理レイヤーやアプリケーションレイヤーなどと、コンピュータ通信ではいうが…それとお前の髪型と一体何の関係が…?」
考え込む斎藤に、千鶴も考え込む。
「通信…の方はよくわかりませんが、女性の髪型でレイヤーっていうと、…こういうふうに長さが違うようにすることを言うんですが…」
千鶴はそう言って、耳のした辺りまでの長さの髪と肩の下まである長さの髪をつまんで、斎藤に見せた。
「…なるほど、長い層と短い層、という意味で女性の髪型にもレイヤーを使うのだな。…そう言えば鈴鹿の髪型もそんな風だったな」
共通の知り合いの女性である「お千」の話題がでて、千鶴はにっこりとほほ笑む。
「お千ちゃんは…あれはレイヤーっていうよりシャギーのような…」
Yシャツを脱いでいた斎藤の手がまた止まる。
「…シャギー?シャギーとレイヤーは何が違うのだ?じゃあ俺の髪型はレイヤーなのかシャギーなのか…」
「え…さぁ…いつもなんとなく使っているので正確な違いまでは…?」
口ごもる千鶴に、斎藤はそうか、とつぶやき、着替えを済ませパソコンを立ち上げて調べ始めた。
「なるほど、勉強になったぞ。お前はレイヤーを入れてローライトとハイライトをいれたのだな。ローライトは顔のまわりにいれると小顔効果があるそうだがそれをねらったのだろうか?また毛先はもう少し短くして前下げのような形にすると顎のラインに沿って揺れてきれいだそうだ。もしくはパーマもいいかもしれないな。最近はいろんなパーマがでていて、それほど傷まないものも緩くウェーブがでるものもあるそうで…」
千鶴談:その日の夕飯は、食べた気がしませんでした。
(女子の髪型の種類とか技術ってよく考えれば難しそうですよね…斎藤さん、そういうところに興味を持ちそうな気がして…)
■平助君
「…平助君、何にも気がつかないの?」
向かいあってご飯を食べながら、少し膨れながら千鶴は言った。口いっぱいに千鶴の手作りハンバーグをほおばった平助が、『へっ?』という顔で千鶴を見る。
目を見開いたままハンバーグを呑みこんで、平助は聞いた。
「何もって…ナニ?ハンバーグに何か入ってんの?」
「ハンバーグじゃなくて、私を見て何か思わない?」
自分を見ている千鶴を、平助もまじまじと見つめ返す。
「千鶴を見て思う事…?今日もかわいいな…とか?」
不思議そうに真顔で『かわいい』と言う平助に、千鶴は真っ赤になって言葉を失くした。
赤くなった千鶴を見て、自分の言った台詞の意味に初めて気が付いた平助も真っ赤になった。慌てたように手を振り言い訳をする。
「いや、だって…!かわいいじゃん。今日も…て何言ってんだ俺…!そうじゃなくて!気づかないって何のこと?」
「あの…もう、いい…です」
「なんだよ、気になるじゃん!なんか俺ばかみたいだし…!」
千鶴は、今日美容院に行って髪型を少し変えたことを話した。平助はもう一度千鶴をまじまじと見て…
「ぜんっぜんわかんねぇ!ごめん!」
小さく溜息をついた千鶴に、平助は慌てたように言う。
「でも千鶴はかわいいよ!髪型がどんなでも!」
…はっ!
シーンとなった食卓で、二人は真っ赤になりながら黙々とハンバーグを食べたのだった。
(あるべき男子の姿だと思います(^o^)/)
■左之さん
「おっ?髪型かえたか?」
帰ってきて千鶴の顔を見るなり、左之はそう言った。
「は、はい。今日美容院に行ってきて…」
「少し大人っぽくなったな。似合うぜ」
カバンを持ったまま、左之は千鶴の頭に手をおくと、くしゃっと髪を乱す。
「おっ、手触りもさらさらだな」
「あ、トリートメントとかしてもらったんで…」
頬を染めて嬉しそうに恥ずかしそうに言う千鶴を見ながら、左之は優しいほほえみが自然と顔に浮かぶのを感じていた。
髪型云々っつーより、女のこの表情がいいんだよな…
女性の髪型や服装のちょっとした変化を気づいてやって褒めたときの嬉しそうな顔が、左之は好きだった。一番きれいだとも思う。そんな表情をつくってやるのも男の甲斐性だとも。
左之はそんなことを想いながら、サロンでさらさらになった新妻の髪に手を潜り込ませ、自分に引き寄せる。
「せっかくきれいになったことだし、新婚のお約束のアレ、やってみるか?」
お約束のアレ?と不思議そうに自分を見上げる千鶴に、左之は唇を寄せながら囁く。
「風呂か夕飯か…おまえかってさ」
返事は決まってるけどな、と言いながら千鶴は左之に抱き上げられ、返事をする間もなく連れて行かれたのだった。
(オトナですね〜////包容力は、左之さんが一番のように思います。さすがアニキ!)
■皆様のお好みの髪褒め隊士は誰ですか?RRAは……恥ずかしながら(←なぜ?)沖田さんです。困ったことに(←なぜ?)ストライクです…orz
☆皆様のお好みの髪褒め隊士☆
土方さん……0人
沖田さん……12人
斎藤さん……0人
平助君 ……1人
左之さん……2人
戻る