【星に願いを】
青藍シリーズ。
沖田さんと千鶴ちゃんはすでに夫婦です。オリキャラの二人の子供もでてくるので苦手な人はブラウザバック!
「雨あがってたよ〜」
金曜日。家に帰ってきた総司に言われて、千鶴は総司一人分の遅い夕飯を温めなおしながら微笑んだ。
「そうですか、週末は晴れるって天気予報が言ってましたもんね。じゃあ日曜日は大丈夫そうですね」
日曜日?何か予定があったっけ……と考えながら寝室で着替えてきた総司は、リビングの棚の上からぶら下がっている笹の葉の飾りを見て「ああ、日曜日は七夕か」と気が付いた。
娘の千代が保育園で作って持って帰ってきたのだろう。本物の笹の葉一枝に、多分千代が作った紙飾りと短冊がぶら下げてある。願い事になんて書いてあるのかと総司は短冊を読んでみて、吹き出した。
『おかしがいっぱいたべれますように』
『どうぶつえんにいけますように』
「すぐに叶いそうですよね」
吹き出している総司を見て、夕飯を運んできた千鶴も笑う。
「ものすごいささやかな願い事だね」
総司は笑いながら席に着いた。
「千代はもう寝たの?」
夜の11時だ。当然とは思いながら総司がそう聞くと、千鶴は頷いた。
夕飯を食べ始める総司の前に座って、二人でいろいろおしゃべりをする。千代の事、今日あったこと、週末の予定、そして七夕の事。
「総司さんは願い事はいいんですか?短冊、ありますよ」
食べ終えたお皿を総司が運び、千鶴が食洗機に入れる。
「願い事ね……『ビールが飲みたいです』」
「……」
千鶴は笑いながら横目で総司を軽く睨むと、冷蔵庫からビールを取り出しコップとともに総司にわたす。
「それって別にお星さまに願わなくてもいいじゃないですか」
千鶴が言うと、総司は楽しそうに笑ってダイニングの椅子に座る。
「そう。僕の願い事は全部千鶴が叶えてくれたからね。多分これからの願い事も全部そうだと思うよ」
「私がですか?」
千鶴も笑うと、総司は千鶴に手を伸ばした。
「そうだよ。もう一つの願い事は、『千鶴にここに来てほしい』」
総司はそう言いながら千鶴の腰に腕を回し、自分の膝の上に座らせる。そしていつまでたっても初々しく頬を染める妻に、軽く口づけをした。
「君は?願い事はないの?」
総司に耳元でそう言われて、千鶴も考えた。
隣に総司がいて、寝室では可愛い娘が眠っていて。
幕末の時のような戦いもなければ生活の不安もなく、そして総司の命の不安もない。
「……そうですね。私も。……私も今とっても幸せで、これ以上の願い事なんてないです」
千鶴の声と表情に、総司も過去を思い出した。
たくさんの人を失って、別れて、ようやく掴んだ幸せも儚くて……
あのころは星に願いたいことがたくさんあった。願ってもかなわないことばかりでそれが余計つらかったけれど。
千鶴を抱きしめる総司の腕が強くなる。
こうやってゆっくりと二人で時を過ごすこと。
これが心からの願いで、そしてもう叶っている。
どちらからともなく二人は顔を合わせた。
そしてゆっくりと、慰めるようなキスをする。心を確かめるための。幸せを味わうためのキス。
暫くそうした後。
総司が千鶴の耳元でささやいた。
「……僕、もう一つ願い事があるんだけど」
総司の肩に頭をもたせかけて、千鶴は総司を見る。
「なんですか?」
総司は千鶴を後ろから抱いていた手のひらを、彼女のお腹の辺りへ廻した。
「……もう一人子供が欲しいな。千鶴と僕の」
そうしてもう一度キス。
今度は安心させるようなキスではなく、甘く誘惑するようなキスだった。
「ん……」
「どう?」
そう聞きながらも総司の唇は、千鶴の顎を辿り耳を優しく舐める。
「……それは、それはお星様にお願いしないと……」
「一緒にお願いしてくれる?寝室は…千代がいるから、リビングのソファで」
総司の言い方に千鶴は思わず小さく笑った。既に総司の手は、千鶴の着ているブラウスの下に忍び込んでいる。
この分だとすぐに願いは叶ってしまいそうだ。
千鶴はそう思いながらうなずいたのだった。
【終】
前世も現世も来世も、おきちづがいちゃいちゃしていますように