SSLの土千ルートの始まりはこんなだといいなーという勝手な妄想です。
第一話(平千ルート)→第二話(沖千ルート)→第三話(斎千ルート)→第四話(原千ルート)→第五話(風千ルート)からなんか続いてる感じです。
土方さんはもーね、メインルートですよ。レッドポジ。千鶴ちゃんのお父さんの行方やら学園の買収問題やら学園祭やら全部ぶっこんであんたがヒーロー!って感じでいいと思います。
すったもんだのあれやこれやのあと。
土方と千鶴やようやく家へと帰り着いた。
もう日はとっぷりと暮れて、一般家庭ではとっくに夕飯も済み寝る前のくつろぎの時間。
学園に集まった記者たちを追い返し、風間をなんとかたたき出して、学園内への説明と学園外への説明をすませたら、こんな時間になってしまったのだ。
土方はカバンをあさって鍵をだすと、ガチャりと自宅マンションの鍵を開けた。そして気づく。
「ああ……お前にも鍵を渡さないといけねぇな」
「……はい、いただけると嬉しいです」
パチリと明かりがついた玄関に入りながら、千鶴はそう言った。
あ、合鍵……
である。一応。
なんの色っぽいこともないが、名前としては合鍵だろう。
千鶴はこの学園の編入が決まる前から、土方のことは知っていた。学園と交流がある島原女子でも、土方は有名だったのだ。そのイケメン具合で。
何度か交流で島原女子に土方が来たことがあり、女子生徒は鈴なりになって土方を見学していた。千鶴も友人のお千に誘われて、一度遠くから土方を見たことがある。周りの女子たちは、『かっこいい〜!』『あの学園をあそこまで大きくしたのはあの人なんでしょ?』『剣道もすごい強いんだってね』ときゃあきゃあ騒いでいた。
遠くから見る土方は、すっきりと鼻筋がとおった涼やかな瞳。男っぽい表情に意志が強そうな顎、スポーツをしてそうな筋肉質な体つき、と、あまり男性に免疫のない千鶴でもぽ〜っと見とれてしまいそうなくらいの美丈夫だった。
まさかそんな人と一緒に住むことになるなんて……
千鶴は「おじゃまします」と言いながら、土方の独り住まいのマンションに初めて上がった。
マンションは3LDK。
独身には広すぎる間取りで、そのせいで一緒に住むことになったのだが。土方が廊下を曲がった先の部屋へと向かうと、そこの電気をつけた。ドアをあけるとそこは8畳くらいの広さの部屋で、中には千鶴の引越し荷物のダンボールが積み上げられていた。
「こんなことになってすまねえな。隣りの部屋が年内で空くらしいんだ。それまでの辛抱だ」
「そんな……私の方こそ、先生の生活のお邪魔をしてしまってすいません」
夏にちょっとした事件があって、千鶴がもうそれまで住んでいた島原女子の近くのマンションでの一人暮らしが難しいだろうということになったとき。近藤を交えて相談したところ、土方のマンションがいいのではないかとなった。
マンション管理会社に問い合わせると、ちょうど土方の隣りの部屋が年内いっぱいで空くという。
土方のマンションは都会の一人暮らし専用のマンションで、ひとつのフロアに二世帯しかいない。つまり今の土方の隣りが引っ越してしまえばこのフロアには土方と千鶴だけ。エレベータでこの階に止まるのは二人だけになる。かなりの安全性が見込まれるということで、既に空く予定の土方の隣りのマンションは手付金を払い、それまでの四ヶ月間だけ土方と同居することになった。
「布団は……ああ、これか」
土方はそう言うと、カバンを置いてジャケットを脱いだ。すぐ近くにいた千鶴は、なぜかその仕草にドキッとする。狭い空間に二人きり、しかも夜、というのが妙に意識させるのだ。
しかし土方は……
「こんなおじさんと二人で不自由も多いと思うが、なんでも言ってくれ」
そう言いながら、ダンボールをどけて、とりあえず必要になる布団を取り出してくれた。『おじさん』と自分を称したことが、千鶴のことはそういう対象ではないということを暗に示している。
千鶴を安心させる為にそう言ったのだろうが、千鶴はなんだか胸がちくりといたんだ。
風間さんと土方先生は大学の同級生だって言ってた。その風間さんが私を婚約者にって言い出したってことは、別に土方先生が私を……その、女として見ても別に変ってわけじゃないよね……って、何考えてるんだろ、私。
変な方向にさまよいでた思考を、千鶴は慌ててかき消した。土方は千鶴の考えなど全く気付いておらず、部屋を出ながら言う。
「……腹減ったな、何か食うか」
「あ、あの、作りましょうか?その……ただで居候させていただくわけですし、何かお役に立てればと……」
ネクタイを緩めてキッチンへと向かう土方の後ろを、千鶴はあわてて付いていく。土方はニヤリと笑うと、千鶴の髪をクシャリを乱した。
「お前は変な気ィ使わなくていいんだよ。お前はお手伝いさんでも嫁でもねえんだからな。どっちかってーと俺の方が保護者としてお前に飯を食わせねえといけねえんだが……」
土方はそう言って冷蔵庫を開ける。
中には缶ビールが六個転がっているだけだった。
土方は、後ろから覗き込んでいる千鶴と顔を見合わせて、ため息をついた。
「……ピザでもとるか」
「配達まで40分だとよ。風呂でも入ってくるか……と」
土方はふと気づいて言葉を止める。千鶴は花の女子高生十六歳だ。おじさんの入ったあとの風呂は嫌だろう。
「お前、先に入っていいぞ。今日は疲れただろう」
「え?私がですか?」
「そうだ、これが追い焚きでシャワーは……」
てきぱきと風呂の使い方を教えて、バスタオルとフェイスタオルの入っている場所を教える。
「シャンプーとかは置いてあるのを使ってかまわねえぞ」
「あの、荷物に自分のシャンプーは入っているので……じゃあ、お言葉に甘えて先に失礼します」
ペコリと頭を下げて、荷物を取りに自分の部屋に戻っていく千鶴を、土方は首をコキコキと鳴らしながら見ていた。
気ままな一人暮らしにいきなり女子高生な同居人はさすがに肩がこる。
だが、まあ、気遣いもできそうだし大人しそうだし、四ヶ月ぐらいは我慢できるだろう。それに今日は二人で遅く帰ってきたが、基本千鶴はいつもはもっと早いはずで、土方はもっと遅い。生活時間帯はずれるからお互い住みやすいだろう。
「ま、四ヶ月の我慢だな」
土方はそう呟くと、背広を脱ぎに自分の部屋へと向かったのだった。
風呂から上がった千鶴と、部屋着に着替えた土方とで、ようやく到着したピザを食べて。
片付けは二人でして、明日の予定について軽く話して、千鶴は「おやすみなさい」と寝室に戻っていった。
あすからの荷解きがたいへんだろう。大物については手伝ってやらねえとな、と思いながら、土方もバスルームで服を脱いだ。
風呂のドアを上げると、いきなり花の香りに包まれる。
「……」
風呂の中を見渡すと、隅っこの方に千鶴のものらしきピンクのボトルやチューブが置かれていた。
ため息をつきたいようなニヤニヤしたいような妙な気持ちで、土方は体を洗う。洗っているあいだ中、花の香りに包まれてウキウキしながらも罪悪感もあるという微妙な気分だ。
これは早くあったまって出るにかぎると、土方は洗い終えて風呂へと浸かった。
「……」
これに千鶴もはいったんだよな……
お湯に浸かっていると考えるつもりもないのに、なぜかその姿が脳内に浮かんできて、土方は慌てて湯に顔をうずめた。その途端、幻聴が聞こえる。
『うわあ、女子高生の入ったお風呂の水飲んでるんですか?土方さん、やっぱり変態なんですねえ』
『くくくく!さんざん志がー教育とはーと云々言ってきたお前がそのざまか!教師でありながら女子高生の入ったあとの風呂に浸かって二ヤついてるなど、PTA会長の名にかけて許すことはできんぞ!』
総司と芹沢の声が聞こえてきて、土方は慌てて風呂から飛び出した。
「っったく…!うかうか風呂にも入れねえ」
土方はぶちぶちと文句を言いながら風呂から出たのだった。
次の日。
千鶴と一緒に登校した土方は、職員室の前で背の高い集団を見つけた。
「……何やってんだ?お前ら」
近づいた土方はそう聞く。
そこには、平助、総司、斎藤、原田、それに部外者の風間が集まっていたのだ。千鶴も不思議そうに首をかしげながら「おはようございます」と挨拶している。
「ああ、ようやく来た。昨日あれからどうなったかなって気になってきてみたら、こいつがここに立っててさ」
総司がそう言いながら風間を指差した。
風間は気にした風でもないく千鶴を見て言う。
「昨日聞き忘れたことがあったのでな。授業が始まる前にと思い、学園に寄ったのだ」
「聞き忘れたこと、ですか?なんでしょう?」
千鶴は風間に聞いた。婚約の件はもうきっぱり断ったはずだ。まだ何かあるのだろうか?風間は一歩踏み出すと、千鶴に行った。
「連絡先を聞き忘れた。携帯は持っているのだろう?電話番号を教えろ」
「え……」
千鶴が唐突な申し出に驚いていると、横から総司も口を出してきた。
「あ、そういえば僕も聞こうと思ってたんだ。LINEやってる?ID教えてよ」
平助も言う。
「あの、さ。おれも前にメールアドレス聞いたんだけど、あのスマホ、落っことしちゃったんだよな。で、せっかく聞いたメアドが消えちまって……。もう一回教えてくんねえ?」
斎藤も頷いた。
「委員会のことや、今後も授業内容について放課後に教える約束をしたな。連絡先がわかっていると急な予定変更に便利だ。携帯電話を持っているのなら、メールアドレスを教えて欲しい」
原田が頭をかきながら言う。
「そうだなあ〜。身上書で聞いた連絡先は土方さんの家電だし、学園唯一の女子の担任ってことで俺も個別に連絡できる手段があると助かるな。携帯の番号を教えてもらえねえか?」
土方が最後に言った。
「帰りが遅くなったり何かあった時のために、携帯の電話番号は必須だな。教えてくれ」
皆から一気にそう言われて、千鶴はパチパチと目をまたたいた。
「あの、えっと……はい、そうですね。えーと……」
平助君は最初にメールアドレス教えたんだし、私も平助君の連絡先知ってるんだから教えないとだめだよね。
→平助君に教える
沖田先輩は夏にもう一度会おうって約束してたのに、私が勝手にすっぽかしちゃって……もうあんなことにならないように連絡先を教えておいたほうがいいよね。
→沖田先輩に教える
斎藤先輩には夏休み中毎日お世話になってたし、これからも多分勉強や学園のことでいろいろ聞きたいことが出てくると思うから、連絡先を知っておいてもらった方がいいかな。
→斎藤先輩に教える。
原田先生は担任だし、学祭委員でもお世話になるだろうし。いろいろ相談にのるって言ってくださってるし多分これからも困ることがたくさんあるだろうから、伝えておかなくちゃ。
→原田先生に教える。
風間さんは父様のことを何か知ってるみたいだし、放っておくとまた勝手に婚約とか嫁とかを発表しちゃったりするかもしれない。連絡が取れないと困るよね。
→風間さんに教える。
土方先生は同じ家に暮らすわけだし、鍵を無くして開けて欲しいとか、また夏の事件みたいにご迷惑をかけちゃったりするかもしれないし、連絡先をもっておいてもらった方がいいよね。
→土方先生に教える。
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