『シンデレラの指輪〜斎藤さんの避妊の謎〜』
ED後。ある日の飲み会での会話
※下品下ネタ注意!※




「ねーところでさ、斎藤君が千鶴ちゃんと仲直りしたのはめでたいんだけど、結局斎藤君がフられた理由はなんだったの?」
総司が枝豆を食べながらそう言うと、平助が肩をすくめた。
「知らね。でももう終わったことだし、どうでもいいじゃん?」
「どうでもよくないよー。ちゃんと原因知っとかないとまた同じこと繰り返しちゃうかもしれないじゃない。その度にシンデレラの指輪の宣伝を毎回するのなんて無理だよ?」
ビールをあけながら言う総司の言葉を聞いて、平助はなるほどとうなずいた。
「……確かに言われてみればそうかもな。結局…なんだったんかな?お互いに『自分が悪かった』って言い合ってて……やっぱ千鶴は試験失敗したり苦学生だったりってのが原因だったんかなー?」
平助が首をかしげていると、珍しく飲み会に参加していた土方は手酌で日本酒をついで、ぐいっと空けた。
「それならもう解決してるからいいんじゃねえか?今後のケンカのもとになるようなこっちゃねえだろ。斎藤がいるときにまた原因を聞いてみればいい」
「あれ?今日、一君来ねーの?」
平助の問に土方は頷く。
「千の家から千鶴が引っ越すんだと。それの手伝いに行くとか言ってたな。おい!タコ刺しもう一皿追加!!」
後半は通りかかった店員に言うと、土方はまたぐいっと酒を煽った。
「もー土方さん、ほどほどにしておいてくださいよ。絡み酒なんですから」
総司が嫌そうにそう言うと、「俺のどこが絡み酒だ!」と土方はすでに絡みつつ言い返す。
「ったく、とっとと一緒に暮らしちまえばいいんだよ。家で千鶴が待ってりゃ斎藤なんて仕事さくさく切り上げて帰るだろうに」
これからは変わるかもしれないが、斎藤の仕事のし過ぎを土方は心配していた。
「プロポーズはしてたみたいですけどね。千鶴ちゃんもOKだったみたいですけど。なんかまどろっこしいですよねあの二人」
「そんなに婚約期間を長くおいてどうするってんだ」
「………もしかして、やっぱあれかな?千鶴が一君をフッた理由?それが解決するまで一緒に暮らさない…とかさ」
「斎藤君はでもフられた理由わかんないって前言ってたよ?」
「千も知らねえって言ってたな」
「千鶴ちゃんだけが知ってるってこと?なんだろう……ハジメテの後にお金渡したってのは、原因の一つではあるけどそれがすべてじゃないって千鶴ちゃん言ってたしねえ……」

腕を組んで『うーん…』と皆が思い悩んでると、これまで一度も発言していなかった左之が、おずおずと挙手をした。
「あー……おれさ、一応知ってるっていうか……まさかとは思うんだけどもしかしたらこれが原因かもとかちらっと思わなくはねえって言うか……」
平助がパッと顔をあげる。
「なんだよ左之さん!知ってたなら早く言えよー!」
「左之さん知ってるんだ?誰から聞いたの?千鶴ちゃん?」
「理由はなんだ?」
次々と聞かれる言葉を、左之は両手をあげてまあまあと抑えた。そしてしばらく迷うように視線を彷徨わせて、ゴホンと咳払いをする。
「……聞いたのは千からだ。千は千鶴と……そのガールズトークってのをしててふときいたらしい。千鶴は……千鶴は、そのよくわかってなかったみてえなんだが……」
もごもごと口ごもる左之に、総司たちがせかす。
「何?もったいぶらないで早く言ってよ」
「……」
左之は溜息をつくと、心を決めたようにキッと顔をあげた。そしておもむろに口をひらく。

「……暗闇の中で光ってたんだとよ、アレが」

「……」
言われた皆は一瞬キョトンとした。
何の話をしているのかわからない。総司が首をかしげる。
「……アレって?」
「……アレって言ったらわかんだろ?……ほら斎藤のアレだよ」
左之が言いにくそうに言う。平助が目をパチパチとまたたかせた。
「……一君のアレって……え?アレ?」
眉間にしわを寄せて土方も言う。
「……つまりだ。千鶴が斎藤をフったのは、クリスマス――まあ二人が初めて……その…そうゆうことになった直後だよな?で、お前はその理由が、斎藤の……『アレ』が暗闇の中で光っているのを千鶴が見たからだと言いたいのか?」
左之が言い訳するように頭を掻く。
「いや、俺もそれが原因のすべてとは言わねーけどよ。でも千鶴ちゃん…その、多分初めてだろ?で結構緊張してたと思うんだけどよ、……その、暗闇の中で初めて見るアレが光ってたら、びっくりするんじゃねえか?千が言うには千鶴も経験や知識がないがならも不審に思ったようで、千に質問してきたらしいんだが……『男の人のアレって光るの?』ってな。ってか、アレって光るヤローもいるのか?俺ぁ初耳なんだが」
平助も狐につままれたような顔をして首を横に振った。
「いや、俺も聞いたことねーよそんなん。見たこともねえし。そもそも俺、一君とプール行ったこともあるし温泉も入ったことあるけどさ、別にひかってなかったぜ?」
左之が眉をひそめて平助を見る。
「でもお前が見たのは明るい場所で、だろ?暗闇で見たか?」
平助は首を横に振る。もちろん暗闇で斎藤のアレを見るような機会はない。そんなシチュエーションはありえない。左之は神妙な顔でうなずいた。
「だから俺らも知らなかったんだよ。あいつのは暗闇で光るらしい」
土方もコソコソ話をするように身を乗り出す。
「……つまり蛍光性ってことか?だがアレを光らせて何の意味がある?」
「意味なんざ知らねえよ。生まれつきだろ?斎藤は自分が異常だって知ってんのか?もし悩んでるようなら相談にのってやるんだが……」

左之がそこまで言った時、隣の席で先程からフルフルと震えていた総司が、ぷーーーーーーーーーーっ!と盛大に吹き出した。
「あっははははははは!あーっはっはっはっははははは!も……だめ……あっはははは!お腹イタ…くーっはっはははははは!!!」
机の上に顔を伏せて、お腹を抑えながら涙まで流して笑っている総司を皆は唖然として見た。
総司はしばらく笑うと、息も絶え絶えと言う風情で肩で息をしながら起き上る。目じりには笑いすぎて涙が光っている。
「なんだよ、総司。なにがおかしいんだ?」
土方が聞くと、総司はまたぷーっと噴出した。
「いや、僕さ。斎藤君が千鶴ちゃんと付き合いだしたころに、斎藤君にあげたんですよね。バラエティパックに入ってたコンドーム」
クスクス笑いの合間合間に、総司は言う。
「斎藤君は『いらん!』とか顔真っ赤にして言ってたけど、こっそりサイフのポケットの中に。斎藤君多分忘れてて、千鶴ちゃんと急にそういうことになって、思い出したんでしょうね。で、それを使ったと」
平助が相変わらず首をかしげている。
「だから?」
一方左之はピンと着た様で指をパチンとならした。
「なる…!ってことは、お前が渡したゴムってのが……?」
「そう。夜に光るってヤツ!あーはっはははっは!いい仕事したねあのコンドーム!避妊だけじゃなくて千鶴ちゃんに誤解を与えて、この飲み会のいいネタにもなってくれて!!斎藤君多分その時は気づかなかったんだろうね!自分のなんかあの時見ないじゃない?初めてエッチする好きな子の裸が目の前にあるんだからさあ!そんな斎藤君とは反対に、千鶴ちゃんは光るアレを見て固まってたんだねー!!!」

大笑いしている総司を、土方と左之、平助は白い目で見ていたのは言うまでもない。




おしまい

避妊はしていた、しかし光っていたということだったようです(笑)