【薄桜学園修学旅行!】

※SSL設定ですが千鶴ちゃんは出てきません。誰ネタというわけでもなく修学旅行の一コマみたいなネタです
※斎藤さんキャラ崩壊注意!苦手な方はブラウザバックでお願いします。



「あーあ、男ばっかりでロスのディズニーランド行ってもたいして楽しくなかったよ」
かちゃかちゃと飛行機のシートベルトをはめながら、総司が溜息をつきながらぼやくいた。
「唯一の女の子の千鶴ちゃんはいっこ下だから日本だしさ」
ぶちぶちと愚痴を言っている総司に、平助が言った。
「まあいーじゃんたまには男ばっかの修学旅行もさ!俺、海外初めてだったから結構面白かったぜ。ハンバーガーうまかったし。それにもう後は飛行機で日本に帰るだけだろ。千鶴も成田に迎えに来てくれるって言ってたし、帰りの座席は三人で並べたし、楽しーよな!」
最後の言葉は隣の斎藤に向かって、平助は言った。
斎藤はシートベルトを締め終わると、静かに頷く。
「そうだな。行きは俺の座席の左右は知らない奴だったので一人で最後までがんばったのだが、帰りはお前たちにも協力してもらおう。さすがに完徹はきついのでな」
「「?何の話?」」
総司と平助がキョトンとした顔で斎藤を見た。斎藤は二人に向き直ると至極真面目な顔で続ける。
「ここだけの話だが、お前たち。飛行機が空を飛ぶ原理を知っているか?」
平助が首をかしげながら答える。
「えーっと…なんだっけ、離陸の時の滑走路走っている速度エネルギーを上へと飛ぶ力へ変換して、羽の上の空気の流れと下の空気の流れの速さを変えるんだっけ?」
「へえ、平助すごいね。さすが物理得意なだけあるね」
総司が驚いたように平助を見た。総司は要領がよく、テストに必要な知識しか覚えていないのだ。
しかし斎藤は静かに首を振った。
「いまのところ、飛行機の飛ぶ原理は『ベルヌーイの定理』と『作用反作用の定理』で説明されているが、突き詰めて考えるとどちらの定理でも詳細までは説明できないのだ。つまり空を飛ぶ原理は、正確にはまだ解明されていないということになる」
「そうなんだ〜。でも実際ちゃんと飛んでるんだから別に原理がなくてもねえ」
肩をすくめる総司に、斎藤は続ける。
「しかし、俺は飛行機を飛ぶ原理を知っている。確かなスジから聞いた話だ」
「え?そうなの?」「なになに?」と食いついてきた総司と平助に、斎藤は重々しく言った。

「乗客の意志の力で飛んでいるのだ」

「「……」」
暫くの沈黙のあと、総司が頭を掻きながら斎藤を見る。
「あー…斎藤君、一週間の修学旅行で疲れてるんだね」
平助も頷いた。
「同感、一君、帰りの飛行機ではゆっくり寝ていくといいんじゃ……」
「いかん!!」
平助の言葉を強くさえぎった斎藤に、平助と総司は目をぱちくりさせた。
「いいか、俺は『乗客の意志の力で飛ぶ』と言っているのだぞ。寝たりしたらどうなるか……!客室乗務員やパイロットは起きているかもしれないが、人数が少なく意志の力が弱まる。そのため俺は行きの飛行機でも一人で起きていた。完徹だ。お前たちの行きの飛行機が落ちずに飛んでいたのは俺のおかげなのだぞ」
総司が呆れたように笑った。
「そんなことあるわけないじゃない。バカじゃないの?斎藤君大丈夫?」
「……信じないのならそれでもいい。俺は一人で起きているまでだ。帰りはお前たちに頼んで少しは眠れるかと思っていたが」
武士のような一徹さで斎藤はそう言うと、前を向いた。

「離陸するぞ。リクライングを直してシートベルトを確認しろー」
土方の声が飛行機の中に響く。
総司と平助は顔を見合わせた。
斎藤はどうやら本当に信じているらしい。話しているのが斎藤だということと、なんちゃら定理を言い出すあたり妙に信憑性があるが、乗客全員が寝たら飛行機が落ちるなどとあるわけはない。今は自動操縦になっており、パイロットすらいなくてもちゃんと飛行機は飛ぶのだ。
いや……まてよ?パイロットがいなくても飛行機が飛ぶ?
なぜだ?
エンジンが動いているから?
「……まさか本当に、全員が寝たら落ちるとかあったりして……?」
単純な平助はすでに斎藤の妄想に汚染されつつあった。総司はバカにしたように笑ったが、しかし少しひきつっているように見えるのは気のせいか…
「やだなあ平助、斎藤君のバカ話、信じちゃったりしてるの?」
「でもさ、総司。寝てる間に……落ちてるんじゃないかとか思うと不安にならねえ?」
「「……」」



「みなさんお帰りなさい!お疲れ様でした〜!」
さわやかな日本の朝日を浴びて、成田空港の到着ロビーには千鶴が待ち受けて出迎えてくれた。
「おはよ……」
「……ただいま……」
先に出てきた平助と総司が千鶴に挨拶をする。二人のあまりのヨレヨレ様に千鶴は目を見張った。いつもさり気なく着崩しながらも清潔感があり髪もつやつやしている総司が、髪はぼさぼさ、制服のシャツも少しでていて、顔色も悪い。そしていつも元気で笑顔の平助も、目が真っ赤に充血して不機嫌総な表情をし、だるそうに歩いている。
「ど、どうしたんですか?何か体調でも……?」
心配する千鶴に、平助が言う。
「帰りの飛行機の中で全く寝れなかったんだよ」
総司もうなずいた。
「僕も……。あー頭イタ…」
「どうして?平助君どこでも寝れるのに…!沖田さんも移動の乗り物はよく寝れるって前に言ってましたよね?」
千鶴が言うと、総司は親指で後ろから出てきた斎藤を指差した。
「斎藤君のせいだよ。へんなこと吹きこむから…!寝ようとして意識がなくなるかな〜ってなるとハッ!と起きちゃうんだよね。飛行機がおちるんじゃないかとか思っちゃって」
平助も頭をかかえる。
「あー、俺これから飛行機乗るたびに、この一君の呪いから逃れられない気がするんだよ!」
「ちょっちょっと待って平助!そんなこと言ったら僕まで一君の呪いに……!」
「いーじゃん!一緒に呪われようぜ!」
「やめてよ!こっち来んな!」
ぎゃあぎゃあやっている二人を、「??」と思いながら眺めていた千鶴に、後ろから斎藤が声をかけた。
「迎えに来てくれたのか。ありがとう」
千鶴が振り向くと、斎藤はさすが斎藤。飛行機から降りてきたとはおもえないくらいビシッとしている。
「あの、斎藤さんは飛行機の中ではよく眠れたんですか?」
斎藤はにっこりとほほえんでうなずく。

「うむ。あの二人が変わりに起きていてくれたのでな。信頼できる友人がいるということはいいことだ」