実録!オカズをめぐる仁義なき戦い(男子チーム編)





「さ・い・と・う・く〜ん」
「なんだ、総司。気持ちの悪い呼び方は止めろ」
振り向いた斎藤は、新八もいるのに気づいて少しだけ目を見開いた。
「なんだ二人そろって。昼飯か?」

場所は会社の社員食堂を兼ねたカフェテリア。
もうすぐ昼休みが終わろうかという時間で、午前中からの仕事が長引いた斎藤は一人で急ぎ昼ごはんのうどんをたべていたのだ。
総司と新八は12時になるのと同時に食事に行っていたと思ったが。
総司と新八は、斎藤の質問には答えずに椅子をひいた。総司は斎藤の隣、新八は真正面だ。二人の笑顔が黒く感じるのは気のせいだろうか。
「僕達、聞いたんだよ。斎藤君が朝、喫煙コーナーの近くで話してたこと」
「ちょうどその時中でたばこ吸ってたやつが、わざわざ教えに来てくれてな」
総司と新八の言葉に、斎藤は何のことだろうかと首をかしげた。
朝……喫煙コーナーの近く……話……?
「ああ、もしかして雪村と話していたことか?」
斎藤が言った途端、新八と総司からぶわっと真っ黒いオーラが立ち上った。
「『雪村とはなしていたことか?』じゃないよ……。斎藤君が友達を売る様な男だとは思ってなかった。これは重大な裏切りだよ」
「そうだ!なんで俺の名前を出してんだよ!別にだす必要もねえだろう!!!これで俺はこれから千鶴ちゃんから『新八さんってこんなに素敵なのにAVなんて見てるんだ……』ってえ目で見られるんだぜ!どう責任とってくれるんだ!!」
「もとから『ステキ』とは思われていないから、そのあたりは大丈夫だろう」
「なにおううううう!!!!」
総司はヒタヒタ暗く冷たく、新八はゴーゴーと熱く燃えて言いつのる様子に、斎藤は肩をすくめて再びうどんをすする。
「そうか。本当のことを言ったまでだが気に障ったのなら悪かった」
『悪かった』という言葉はあるものの、まったく謝っていない斎藤の態度に、総司と新八もカチンと来た。
総司の目がすわる。
「……そう、斎藤君がそのつもりならこっちにも考えがあるよ」
「別に何を考えてもかまわんが、俺の答えは雪村に答えたとおりだぞ」
新八が唾を飛ばし斎藤を指差しながらわめく。
「お前のやったことはなあ!俺らだけじゃなく男全部を敵に回したってことだ!な〜にが『男なら誰でもAVを見る、と荒唐無稽なことを』だ!男なら全員見るんだよ!」
「俺は見ない」
「そうだね、斎藤君は見ないよね。それは知ってるよ」
総司がうなずいたのを見て、新八が「お前も裏切るのか、総司!」と叫ぶ。総司は新八に向かって首を横に振ると、カフェテリアの入口辺りを見て手を振った。
「来た来た、土方さんにつきあわせれて昼休み中ずっと仕事してたからそろそろ来るんじゃないかと思ってたんだよね。そしてあっちには呑気にジュースを買ってる人もいるし」
総司の視線を追ってカフェテリアの入口辺りを見ると、土方につれられた千鶴がトレイに昼ごはんを乗せて席を探すようにあちこちを見ていた。総司が手を挙げたに気づき、土方と一緒にこちらにやってくる。
そして反対側の自販機コーナーにはだべりながらジュースを買っている平助と左之。こちらも総司が手をあげ「コイコイ」と手首を振ったため、不思議そうな顔をしてやってくる。
コチラに向かってくる面々を見ながら、総司は斎藤をチラリと見た。
「斎藤君はAVは見ないよ。その点は千鶴ちゃんに答えた内容はあってる。でもね、千鶴ちゃんの質問の本当の意味には答えてないね」
「何?」
眉間にしわを寄せて聞き返した斎藤を無視して、総司はにこやかに土方、千鶴、原田、平助に挨拶をする。
「偶然だね〜。さ、座って座って。ところで千鶴ちゃん、朝、斎藤君に何か聞いてたでしょ?」
「え?朝、ですか?」
昼ごはんのオムライスをスプーンですくいながら、千鶴は聞き返した。そしてすぐに思いいたる。
アダルトビデオのことだ。

ど、どうして?あの時誰もいなかったのに……!!まさか斎藤さんが言ったの?
皆の前でこんな話、恥ずかしい〜!!

考えていることがあからさまに顔にでる千鶴の様子に、斎藤がすかさず言った。
「いや、俺が皆に言ったわけではない。こういう話題はあまりおおっぴらにするべきではないと俺も思っている」
斎藤がそういうと、総司が厭味ったらしく横目で見る。
「よく言うよ。人の名前をおおっぴらに出してたのは誰なんだろうね」
土方、原田、平助は首をかしげている。彼らの顔を見ながら、総司は言った。
「あ、何の話かわかんないよね。千鶴ちゃんがみんなに聞きたいみたいなんだ。『男がアダルトビデオを見るのは普通かどうか』」

「………」

途端に辺りが静寂に包まれた。
千鶴はいたたまれなくて肩をすくめ俯く。しかし総司は全く気にせずに続ける。
「そしてね、それを聞かれた斎藤君は、僕や新八さんは見るけど自分は見ないって言いきったらしいんだよ。土方さんと左之さん、平助は見るよね?」
平助はぎょっとして千鶴の顔と総司の顔を見ながら慌てたように言った。
「ちょっ……!おまっこんな!ち、千鶴の前でそういうこと……!」
「なんで?僕は斎藤君に平気で言われたよ?平助が答えられないなら僕が言ってあげるけど、千鶴ちゃん。平助も見てるよ。新八さんと趣味が似てるからよく貸し借りしてるね」
「のおおおおおおおおお!!!何言ってんだよ、総司!!そんなこと言わなくていいんだよ!趣味って…!!お、お前だって変な趣味な癖に!!!」
総司はキョトンとしたように答える。
「僕?僕の趣味は至ってノーマルだけど?平助たちだってまあ普通だよね、巨乳好きってのは」
「うおおおおおおお!!!」「総司!!!!!」
新八と平助は頭を抱えてうずくまった。平助が涙目になりながら言い返す。
「お前だって!お前だって、SMが好きな癖に!!」
「僕はソフトSMだよ。やっぱり女の子が気持ちよくならないとね。ハードなSMが好きなのは土方さんでしょ」
総司の言葉に、『ったくくだらない話をしやがって』という顔をしながら味噌汁を飲んでいた土方は、ぶーーーーっと味噌汁を吐き出した。
「な、なにを……ぶmwくppwあ!!!」
最後は言葉にならないくらい動揺している土方を、隣の千鶴は目を見開いたまま見つめている。まさか…まさかこの土方もアダルトビデオを見ているのだろうか?平助は……まあショックはショックだが正直土方も見ているというのはショックだ。しかも…なんだか変態そうなものを好んでいるようだ。こんなに整った顔をしているのなら、そういうことをしたくなったら進んでやってくる女の子には事欠かないだろうになぜわざわざそういうものを使うのか?
変態を見るような目で千鶴に見られて、土方は慌てた。
「ちょっ……!ちょっと待て!総司てめええ!自分が売られたからって人を売る様な事をしやがって!」
「売られたものは売りかえす!土方さんが見てるのは本当だし、凌辱ものが好きなのも本当ですよね」
土方が振り上げたこぶしをひょいっと避けて、総司は楽しそうに言った。土方は自分を見ている千鶴に、言い訳するように言う。
「いや、別に普通だよ。そんなにへんなもんは見てねえよ、大丈夫だ」
何が大丈夫なのかわからないが、土方はそう言い、そして取ってつけたように左之を指差す。
「こいつだって見てんだぜ。お気に入りのAV女優がいてその女優がでてるやつは凌辱ものだろうと痴漢ものだろうと見てやがる」
突然話を振られ、しかも自分の性癖を千鶴にばらされた左之は、土方に向き直った。
「おいおい、土方さんやめてくれよ。そんなこと言ったら千鶴が誤解するだろ?俺はお気に入りの女優だけじゃねえ。女でさえあればどのAVだって大好きだ!」
「さすが左之さん!!」
総司と平助が、左之の男気のある発言に吹き出した。お腹を抱えて笑いながら、茫然と固まっている千鶴に総司は言う。
「ね?みんな見てるでしょ?男は生物学的にヌく必要があるんだよ」
総司の言葉は赤裸々だった。あっけらかんと言い切った左之に、それに大笑いしている男性陣を見ながら、千鶴は最後の砦の斎藤を見る。
「で、でも……斎藤さんは見ないって……」
しかしそれに総司はあっさり答える。
「ああ、アダルトビデオを見ないだけ。他のエッチな奴は見てるよ…っていうかこの中で一番の変態は斎藤君だと僕は思うね」
「総司!!!」
うどんを食べ終えた斎藤が慌てて総司の口を押えようとする。しかし恨みはらさでおくべきか…、とばかりに総司は楽しそうに続けた。

「斎藤君のオカズ、なんだか知ってる?なんと……」

キラキラした笑顔で続きの言葉を溜めた総司に、皆ついつい言い合いをやめて次の言葉を待ってしまった。斎藤が手で自分の額を押さえている。

「本!しかもエロいグラビアとか雑誌とかエロマンガじゃないよ!?しょーせつ!小難しい奴!でも小説でもエロいのあるじゃない?そういうのが大好きなんだよね。そんでもって海外にまで手を広げてエロをよみたいばかりに英語、フランス語、スペイン語、中国語と勉強しまくり全世界のエロ小説を読破せんばかりの勢いで日々勉強しつつエロをたのしんでるってわ・け・−−−−−!!!どう?すごいよね!このエロに対する執着!いやあ、僕はエロを読むためにそこまで時間と労力をさいて勉強しようなんて思わないもんね。やっぱりこの中で一番エロいのは斎藤君!ザ・キング・オブ・エロ!!」
ふるふると握りこぶしを震わせながら総司の言葉を聞いていた斎藤がかみつく。
「何を言う!性は太古から全世界共通の重要な文学テーマだ。性を入口にしただけで、俺がしているのは人間の普遍性を知りたいと勉強をしながらさぐっているだけだ!お前の方こそお手軽なAVで、さらにお手軽なソフトSMでお手軽に処理しているだけではないか!!」
「そっかー!僕はソフトSMだからみんなと同じ土俵にはのれないな。若輩者はハードSMの好きな土方さんに席を譲りますよ。さ、土方さん、一番最近見たAVで女の子をどんなひどい目にあわせてたか語ってください」
「総司!!いいかげんにしろ!俺はなあ、挿れて出してハイ終りっていう動物みてえな単純行為じゃ物足りねえだけだよ。言葉や道具でいかに女を目覚めさせるかっていう精神性を大事にしてるだけだ!人を変態みたいに言うんじゃねええ!」
土方がブチ切れて身もふたもないことを言うと、新八と平助から抗議の声があがった。
「なんだよ単純な行為って!単純だからこそ奥が深いんだろ?自分にないものに魅かれて何が悪いんだよ!」
左之もうなずく。
「そうだな、巨乳は同志も多いしその分いい女優も多いし奥が深いっちゃあ深いな。ところで千鶴」
男の本音を赤裸々に聞かせられて茫然と固まっていた千鶴は、左之の問いかけに機械的にそちらを見た。左之は、ポンポンと千鶴の頭を叩いて優しく聞く。
「お前の旦那はどのタイプなんだ?巨乳?凌辱?ソフトSM?まあ文学ってのは無いと思うが。土方さんと結構タイプが似てるから凌辱系かな」
だんだん感覚がマヒして来ていた千鶴は、ここが勤務中の会社で昼下がりのカフェテリアであることももう頭から消え去っていた。
左之の質問に反射的に口を開く。

「あ、千景さんは………触手モノが……」

「…………」

一瞬にして空気が固まった。千鶴は何事かと皆の顔を見る。
しばらくして左之が、軽く手を振って言った。
「いやあ……そりゃかなり……」
総司もうなずく。
「そうですね…完敗 です」
千鶴はきょときょとと皆の顔を見
た。
「え?…え?」
この空気はなんなのかと焦る千鶴に、土方が肩をポンとたたく。そして優しい紫の瞳で言った。

「……がんばれよ」

「ハ、ハイ……」
思わずそう返答をした千鶴だったが、そんなに頑張らないといけないような夫の性癖なのかと青ざめたのだった。





RRA
英里さん!斎藤さんのヌキネタありがとう〜♪




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